シュヴァルツシルト式望遠鏡

シュヴァルツシルト式望遠鏡：優れた性能と設計上の課題

シュヴァルツシルト式望遠鏡は、20世紀初頭、カール・シュヴァルツシルトによって考案された反射望遠鏡の一種です。その特徴は、2枚の非球面鏡を用いることで、色収差（光の波長によって焦点位置が異なる現象）と像面湾曲を同時に補正している点にあります。これは、当時としては画期的な技術でした。

シュヴァルツシルトは1905年にこの設計を発表しましたが、2枚の鏡面形状が球面から大きく異なるため、当時の技術では製作が困難でした。そのため、長らく理論上の望遠鏡に留まっていました。

優れた光学性能

シュヴァルツシルト式望遠鏡の大きな利点は、その優れた光学性能です。2枚の非球面鏡の組み合わせにより、色収差と像面湾曲が非常に小さく抑えられています。これにより、シャープで歪みの少ない高解像度の画像が得られるため、高精度な観測に適しています。特に、紫外線や赤外線といった波長域での観測に有効です。

設計上の制約と課題

しかし、シュヴァルツシルト式望遠鏡には、設計上のいくつかの課題があります。

副鏡の大きさ: 副鏡の直径が主鏡の約半分と大きいため、主鏡を大きく遮光してしまいます。これは、集光効率の低下につながります。
鏡筒の長さ: 鏡間距離が焦点距離の1.25倍と長いため、鏡筒全体の長さが大きくなります。これは、地上での観測では取り扱いが困難になります。また、遮光筒が必要となることも、鏡筒の長さ増加に寄与します。
非点収差: 周辺部の星像がボケる非点収差が比較的大きいため、広い視野での観測には適していません。F3の望遠鏡では、直径1.5度の視野周辺で星像のボケが直径18秒に達することがあります。
像面湾曲: 像面湾曲は完全に補正されているわけではなく、メリディオナル像面とサジッタル像面の平均像面が平面になる程度です。

これらの課題のため、シュヴァルツシルト式望遠鏡は地上での観測にはあまり用いられていません。

宇宙空間での応用

シュヴァルツシルト式望遠鏡の真価は、宇宙空間での観測において発揮されます。1968年には、人工衛星OAO-8号に口径32cm、F2のシュヴァルツシルト式望遠鏡が搭載され、遠紫外線観測用TVカメラとして実用化されました。また、赤外線検出器への応用も研究されています。地上では克服困難な、鏡筒の長さや設置の難しさの問題が、宇宙空間では軽減されるためです。

世界最大のシュヴァルツシルト式望遠鏡

1988年時点で世界最大のシュヴァルツシルト式望遠鏡は、インディアナ大学にある口径60cm、焦点距離2m（F3.3）の望遠鏡でした。

まとめ

シュヴァルツシルト式望遠鏡は、優れた光学性能を持つ一方で、設計上の制約によって地上での使用は限定的です。しかし、宇宙空間での観測においては、その性能が最大限に発揮され、重要な役割を果たしています。今後、技術革新によって、地上での利用も広がる可能性があります。

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