像面湾曲

像面湾曲：光学系における焦点面の歪み

像面湾曲とは、レンズや鏡などの光学系において、焦点面が平面ではなく湾曲してしまう収差です。平行光線が光学系を通過した後、一点に集まるのではなく、曲面上に焦点が形成される現象を指します。これは、光学系の設計やレンズの形状によって生じるもので、球面収差、非点収差、コマ収差、歪曲収差と並んで、ザイデル収差の一つに分類されます。

像面湾曲の発生と影響

単純な凸レンズ一枚の場合、焦点面は周辺部がレンズ側に湾曲した形状になります。光学系が単純なほど、この傾向は顕著になります。無限遠の被写体撮影や書類複写などでは、像面湾曲は画像の鮮鋭度に大きな影響を与えますが、近距離の被写体を撮影する場合、特に日の丸構図などではそれほど目立たないこともあります。

しかし、テストチャートの撮影や、カメラのフィルム面にスライドフィルムを通して投影するチャート投影テストなど、平面の被写体を撮影する場合には、像面湾曲の影響は深刻です。周辺部の解像度が低下し、画像全体にピントが合わない、いわゆる「周辺減光」のような現象が発生する可能性があります。

像面湾曲と密接に関連しているのが非点収差です。像面湾曲によって生じる焦点面の湾曲は、同心円方向と直径方向で異なる曲面となる場合があり、これが非点収差として現れます。写真レンズでは、像面湾曲の補正は比較的甘く、同心円方向と直径方向の像面の一致に重点を置き、非点収差を抑える設計が採用されることがあります。そのため、周辺部の解像度は完璧ではないものの、美しいボケ味の写真が得られる場合があります。

像面湾曲の補正

像面湾曲を補正する主な方法は、ペッツヴァール条件を満たすレンズ設計を行うことです。これは、ジョセフ・マキシミリアン・ペッツヴァールによって発見された原理で、特定の条件下では焦点面が平面になることを示しています。

また、レンズ非交換式カメラなど、レンズの特性が既知の場合、フィルム自体を湾曲させることで、像面に沿わせる手法も用いられます。ミノックスなどのレンズ付きフィルムカメラでは、この手法が採用されていた例があります。

反射光学系における像面湾曲

反射光学系においても、像面湾曲は発生します。グレゴリー式望遠鏡では、主鏡と副鏡が共に凹面鏡であるため、像面は前方に向かって強く湾曲します。しかし、接眼レンズの像面湾曲によって、ある程度打ち消される場合があります。一方、カセグレン式望遠鏡では、主鏡が凹面鏡、副鏡が凸面鏡であるため、像面は比較的平坦になります。シュミットカセグレン式望遠鏡では、特定の条件下で正確な平面像面を得ることが可能です。

まとめ

像面湾曲は、光学系設計において重要な課題の一つです。その影響は、撮影対象や光学系の種類によって大きく異なりますが、高精細な画像を得るためには、適切な補正が必要となる場合が多いです。本稿では、像面湾曲の基礎的な性質と、その補正方法について解説しました。より詳細な情報については、光学系の専門書を参照することをお勧めします。

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