ショットガンハウス

ショットガンハウス：アメリカ南部の象徴的な住宅

ショットガンハウスは、アメリカ合衆国南部、特にニューオーリンズ周辺で多く見られる、細長い長方形の住宅です。間口は狭く、通常3.5メートルを超えることはなく、正面と裏手に扉を持つのが特徴です。南北戦争後の1861年から1920年代にかけて、アメリカ南部で最も一般的な住宅形式の一つとして広く普及しました。ショットガンシャック、ショットガンハット、ショットガンコテージ、レールロード・アパートメントなど、様々な呼び名でも知られています。

構造と特徴

ショットガンハウスは、3～5室が一列に並んだシンプルな間取りが特徴です。廊下や玄関ホールはなく、各部屋が一直線に連なっています。典型的な間取りは、玄関からリビング、寝室、そして奥にキッチンが配置される形です。初期のショットガンハウスには浴室がなかったことも多く、後年の改修で増設されたケースも見られます。

その名の由来については諸説あります。玄関から散弾銃を撃つと、弾丸が各部屋を貫通して裏口から出るという説、使い古された木箱を建材に使用したという説、アフリカの言葉に由来するという説などがあります。

ショットガンハウスの建築様式には、いくつかのバリエーションが存在します。

シングルショットガン: 伝統的な独立型の1階建て。
ダブルショットガン（ダブルバレルショットガン）: 2棟のショットガンハウスが壁1枚で繋がったもの。土地や資材の節約に繋がり、貧困層の地域で多く建てられました。
キャメルバックハウス（ハンプバック）: 2階部分が正面から後退した位置に設けられたもの。ラクダのこぶのような形状からこう呼ばれます。
ダブルウィドゥスショットガン: 通常の2倍の敷地を利用して建てられた幅広のショットガンハウス。
* ノースショアハウス: 3方に広いベランダを持つもの。富裕層の別荘として建てられたものが多く、その名が付けられました。

これらのバリエーション以外にも、側面にキッチンへのドアを持つものや、ポーチが建物の奥行き全体にわたって設置されているものなど、様々な形態があります。

歴史と社会背景

ショットガンハウスが普及した背景には、いくつかの要因が考えられます。当時の財産税が敷地の幅によって課せられていたため、間口を狭くすることで税金を抑えられたという説や、風通しの良い間取りが暑さ対策に有効だったという説などです。また、建設費の安さも普及に貢献したと考えられます。

当初は中流階級向けに建てられましたが、20世紀半ばには貧困層の住宅として認識されるようになりました。そのため、多くのショットガンハウスは再開発によって取り壊されてきました。しかし近年では、歴史的価値が見直され、保存や高級化（ジェントリフィケーション）の対象となるケースも増えています。

ニューオーリンズでは、アフリカ系アメリカ人の建築職人が多く関わったという説もあります。アフリカの建築様式の影響が見られるという指摘もあり、その歴史的、文化的背景も注目されています。

文化的な影響

ショットガンハウスは、アメリカ南部の文化や民俗伝承にも影響を与えています。幽霊や精霊がショットガンハウスに引き寄せられるという言い伝えや、有名な音楽家たちがショットガンハウスに関連したエピソードを持つなど、南部の人々の生活に深く関わってきた住宅と言えます。トーキング・ヘッズの楽曲「ワンス・イン・ア・ライフタイム」でも、ショットガンハウスが歌詞に登場しています。

近年の状況

20世紀前半には自動車やエアコンの普及により、ショットガンハウスは時代遅れになり、建設数は減少しました。第二次世界大戦後は郊外住宅地の開発が進み、都市部に残るショットガンハウスは、インナーシティ問題に直面するようになりました。荒廃や空き家化が進んだものの、近年では歴史的建造物としての価値が見直され、保存や改修の動きも出てきています。しかし、多くのショットガンハウスは依然として取り壊しの危機に瀕しています。

ショットガンハウスは、アメリカ南部の歴史と文化を象徴する住宅です。その簡素ながらも機能的な構造、そして社会的な変遷を反映した歴史は、現代においても多くの関心を集めています。今後、どのように保存・活用されていくのか、注目すべき点です。

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