シラン (植物)

シラン（紫蘭）

シラン、または紫蘭（学名: Bletilla striata）は、ラン科シラン属に属する宿根草で、特に日向の草原で見られる地生ランとして知られています。その美しい紫紅色の花は、春の訪れを告げ、観賞用として多くの庭や公園に植えられています。

形態と生態

シランの特徴的な部分は、地下に存在する偽球茎です。これらの偽球茎は丸く、平らで、古いものが何個も連なっています。地上部には、新しい偽球茎から生じる根出状の葉が、通常3枚から5枚出ており、これらの葉は広めの長楕円形をしていて、薄いながらも堅く、表面には多数の縦筋があります。

花は4月から5月にかけて咲き、花茎の先に数個の花がつく形で成長します。花の色は紫紅色ですが、観賞用に栽培されると、白色や斑入り、淡色花、花弁が特殊な形に咲く「三蝶咲き」の品種も存在します。それぞれの花は細長く、あまり開ききらない姿が特徴的です。

分布

シランは日本の本州（福島県以西）、四国、九州、南西諸島、さらに台湾や中国原産でもあります。野生のシランは準絶滅危惧種として保護されており、実際の自生個体を見分けるのは難しいものの、栽培品は非常に一般的に流通しています。これにより、自然環境でも栽培から逸出した種子が目にする機会があります。

保全状況

環境省のレッドリストでは、シランは準絶滅危惧（NT）に分類されています。このことからも、保護と継続的な観察が求められています。

人間との関わり

シランはラン科植物としては特異な性質を持ち、日向の畑土での栽培が容易です。そのため、観賞用として庭に植えることが広く行われています。植物自体は非常に頑丈で、半日陰から日向、多様な環境に適応でき、乾燥や過湿にも耐えることができます。特に、シランの種子は一般的なラン科の植物に比べて発芽が容易で、多くのケースで簡単に苗を得ることができます。

また、無菌播種を行えば、水に糖類を加えた培養液上でも高い発芽率を誇るため、無菌播種の練習に使われることもあります。

シランの偽球茎は白及（百芨）と呼ばれ、漢方薬としても利用されており、止血や痛み止め、慢性胃炎の治療に効果があるとされています。このようにシランは観賞用だけでなく、医療の分野にも関わりを持っています。

商業面では、シランは非常に人気があり、時折「姫シラン」と呼ばれる交雑種が流通することがあります。これらの交雑種は、野生のシラン個体群との遺伝的交雑の可能性があるため、保護活動にとっては懸念材料ともなっています。

最終的に、シランはその美しさと生命力に留まらず、人間の生活と密接に関わっており、今後の保護と栽培において重要な役割を担っています。

もう一度検索