シルヴァ・コシナ

シルヴァ・コシナ（Sylva Koscina）は、1933年8月22日、旧ユーゴスラビア王国のザグレブ（現クロアチア）に生を受け、主にイタリア映画界で活躍した国際的な女優です。彼女は子供時代にあたる11歳で、イタリアに滞在していた姉を訪ねたことをきっかけに、その後イタリアで暮らすことになりました。イタリアで高校を卒業後、ナポリ大学の理学部で化学を専攻するなど、当初は学術的な道を目指していました。

女優としてのキャリアは、学問とは全く異なる意外な形で幕を開けます。1952年に「ミス・ダ・タッパ」の栄冠に輝き、その美貌が公の場で注目されました。さらに1954年には、イタリア一周自転車レースの優勝者に花束を贈呈する役を務め、ここでもその容姿が多くの人々の目に留まりました。これが映画界への入り口となり、初期にはいくつかの作品に出演しましたが、すぐに大きな注目を集めるまでには至りませんでした。

彼女の女優人生における決定的な転機は、1956年に訪れました。イタリア映画界の巨匠ピエトロ・ジェルミ監督の作品『鉄道員』（Il Ferroviere）で、重要な役どころである長女ジュリア役に抜擢されたのです。この作品での演技は高く評価され、シルヴァ・コシナは単なる容姿の美しい人物から、演技力を持つ本格的な女優として広く認識されるようになりました。『鉄道員』の成功が、彼女のその後の華々しいキャリアの礎を築いたと言えます。

『鉄道員』でのブレイク後、シルヴァ・コシナはイタリア映画界で引く手あまたの存在となりました。そして彼女の活動の場はイタリア国内に留まらず、アメリカ合衆国やドイツなど海外の映画にも積極的に出演し、国際派女優としての地位を確立しました。1950年代後半から1970年代にかけて、彼女は国際的な舞台で存在感を示し、当時のイタリア映画黄金期を彩る重要なスターの一人となりました。

私生活では、映画プロデューサーであったライモンド・カステッリと結婚していた時期がありました。晩年は病と闘い、1994年12月26日、ローマにて乳癌のため、61歳でその生涯を終えました。シルヴァ・コシナは、短い人生ながらも、イタリア映画史そして国際的な映画シーンに確かな足跡を残した女優として記憶されています。

もう一度検索