シロヘリカメムシ

シロヘリカメムシ

シロヘリカメムシ、学名 Aenaria lewisi (Scott, 1874) は、カメムシ目カメムシ科に分類される昆虫の一種です。その和名は、前翅の側面に見られる白い帯状の模様に由来しています。

特徴

成虫の体長はおよそ14mm程度で、体色は全体的に緑色を帯びた灰褐色をしています。体はやや扁平な形をしており、特に前胸部から後方にかけて徐々に幅が狭まる特徴的な外形を持ちます。頭部は比較的に大きく発達し、前方へ突き出ています。

触角は5節から構成されており、根本側の第1節と第2節の大部分は淡褐色ですが、それ以外の節は黒褐色を呈しています。単眼は鮮やかな紅色をしています。前胸背は扁らで、その両側面は暗褐色に色づいています。前胸背の後端は細くなっています。

前翅は腹部の後端を越えるほど長く、その革質部（硬い部分）の前縁、特に腹部の側面と重なる部分には、和名の由来ともなっている明瞭な黄白色の帯状の斑紋が見られます。前翅の先端側の膜質部（柔らかい部分）は褐色で、その中の脈は周囲より濃い色をしています。腹面は淡黄褐色で、側面部には微細な黒い点刻がびっしりと並んでいます。また、腹部の中央には一本の黒い縦筋模様、あるいは黒い斑点が縦に連なった列が見られることがあります。歩脚は灰褐色をしています。

分布

日本では、北海道、本州、四国、九州といった主要な島々に広く分布しています。日本国外においては、台湾、朝鮮半島、中国、インドなど、東アジアから南アジアにかけての地域にも生息が確認されています。

習性・生態

本種は主にネザサ、ミヤマザサ、メダケなどのササ類を寄主植物としています。これらのササ類の茎や葉に付着して汁を吸うと考えられています。ごく稀にイネ科の作物にも付着することが報告されていますが、農業害虫として重要視されることは少ないようです。

分類と類似種

シロヘリカメムシは、シロヘリカメムシ属 (Aenaria) の基準種（タイプ種）として位置づけられています。この属は、近縁なイネカメムシ属 (Niphe) と形態的に非常によく似ています。

両属を区別する主な特徴は、頭部の形状と先端の構造にあります。シロヘリカメムシ属の頭部はほぼ三角形で側面が直線的であるのに対し、イネカメムシ属では頭部の側面がやや湾曲します。また、シロヘリカメムシ属では頭部の先端が３つに分かれ、左右の側葉が中央の中葉よりも前方に突き出し、中葉の前で互いに接する構造を持ちます。一方、イネカメムシ属では側葉は中葉よりも前に出ないか、わずかに前に出る程度で、中葉の前で接することはありません。

日本のシロヘリカメムシ属には、現在までに本種 Aenaria lewisi のみが知られています。これに対し、イネカメムシ属にはイネの重要な害虫として知られるイネカメムシ (Niphe elongata) が存在します。イネカメムシは外見上シロヘリカメムシと非常によく似ていますが、前述した頭部の形状や先端構造といった形態的な相違点によって両種を識別することが可能です。

参考文献

石井悌他編, 1950. 『日本昆蟲圖鑑』, 北隆館.
安永智秀他, 1993. 『日本原色カメムシ図鑑』, 全国農村教育協会.
* 石川忠他編, 2012. 『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』, 全国農村教育協会.

もう一度検索