シロヴィキ

シロヴィキとは

シロヴィキ（複数形：露: силовики́、英: Siloviki）またはシロヴィク（単数形：露: силови́к、英: Silovik）は、ロシアの政治ジャーナリズムにおいて使用される専門用語で、主に治安や国防に関連する省庁の職員やその出身者を指します。この用語の語源はロシア語で「力」や「武力」を意味する「シーラ[сила]」に由来しています。

日本のメディアでは、シロヴィキを「武闘派」と訳すことがありますが、これは誤解を招く表現です。シロヴィキの正確な意義は、強硬派やタカ派といった概念とは異なり、特にエリツィン政権やプーチン政権下における治安機関や国防機関の出身者たちを特徴づけるものです。

特徴と背景

シロヴィキの特徴は、単一の指導者に従ったイデオロギー集団ではなく、むしろ高等教育を受けた専門家たちで構成されていることです。彼らは実務的な法秩序の確立に努め、ロシアの国益を最優先に考えます。また、過去のビジネス経験を持ち寄り、国の経済政策に影響を与えることもあります。一方で、人権や民主主義についての配慮は少ない傾向が見られ、親中派であることも指摘されています。

歴史的背景

シロヴィキという用語は、ソビエト連邦の崩壊後に出現しました。1990年代初頭のエリツィン政権下では、新興財閥「オリガルヒ」が横行し、政府の武力機関への依存が強まりました。特に、1993年のモスクワ騒乱事件を経て、エリツィンは武力機関に支援を求めるようになり、シロヴィキの用語が使われるようになりました。

1996年の大統領選挙で再選を果たしたエリツィンは、側近や新興財閥との癒着構造を深め、その中で2000年にプーチンを首相に任命します。プーチンの大統領就任により、シロヴィキはロシア政治の主要な力となり、オリガルヒたちは排除されていきました。特に、プーチンが旧KGBの出身であることから、シロヴィキの影響力は飛躍的に増しました。

その後、メドヴェージェフ政権下でもシロヴィキの影響は続いており、彼らは経済への介入を進めています。シロヴィキにカテゴライズされる政治家には、イーゴリ・セーチン（副首相）、ヴィクトル・イワノフ（連邦麻薬取締庁長官）、ニコライ・パトルシェフ（ロシア連邦安全保障会議書記）などが含まれます。

経済界への影響

シロヴィキの影響は、経済界にも及んでいます。彼らが経営する企業には、ロステック（Ростех）などがあり、国家政策に直接関連しています。特に、メドヴェージェフ大統領による国有株式の売却命令を受けて、ロステックは国策会社としての位置付けを確立しています。

まとめ

シロヴィキは、ロシアの現代政治において無視できない存在となっています。彼らは治安・国防機関からの出身やその関与により、国家の政策決定において重要な役割を果たし続けています。そのため、シロヴィキの動向を観察することは、ロシア政治の理解において欠かせない要素と言えるでしょう。

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