シンシナティ美術館

シンシナティ美術館

シンシナティ美術館は、アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティにある、アメリカで最も古い美術館の一つです。1881年に創立され、美術品収集に特化した施設としては、アレゲーニー山脈より西で最初のものとなりました。6万7000点を超える収蔵品は、人類の歴史6000年を網羅し、中西部地域において最も包括的なコレクションの一つとして知られています。

歴史

19世紀後半、公立美術館はまだ一般的ではありませんでした。特にシンシナティのような東海岸から離れた地域では珍しい存在でした。1876年のフィラデルフィア万国博覧会の成功を受け、シンシナティに女性美術館協会が設立され、地域住民のための専門美術館設立の準備が始まりました。1881年、「シンシナティ美術館協会」が発足し、美術館はシンシナティ音楽堂の南棟を借りて開館しました。1886年にはエデン・パーク通りに美術館の建物が竣工し、翌年にはマクミッキン美術学校が移転し、「シンシナティ美術学校」と改称しました。

美術館は創設当初から地域社会の強力な支援を受けており、多くの市民からの寄付がありました。特に実業家のメルヴィル・E・インゴールズからの財政援助により、収蔵品は大幅に増加しました。それに伴い、施設の増改築が繰り返され、1907年のシュミドラプ棟、エマーリー棟、1930年代のハナ棟、フランス美術棟の増築を経て、現在のような長方形の建物となりました。これにより、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの美術品を展示するスペースが確保されました。1940年代後半から1950年代前半の改築では、かつての大展示室が2層構造に作り変えられ、現在の正面玄関とホールが形成されました。1965年にはアダムズ=エマーリー棟が完成し、常設展と特別展の展示スペースが拡大し、講堂や会議室などの設備も充実しました。

1993年には1300万ドルを費やした内装工事が完了し、隠されていた装飾が再発見されました。この工事では、美術館の特徴である大展示室の構造変更、展示室の新設、照明と空調設備の更新も行われました。増床により、特別展示室は大規模な展覧会を開催できる930平方メートルの広さになりました。1998年には、シンシナティ美術学校との経営分離案が理事会で承認され、2005年に学校はオーバー・ザ・ライン地区に移転しました。

21世紀に入る頃には、美術館の収蔵品は6万点を超え、オハイオ州最大の美術館となりました。2003年には「シンシナティ棟」がオープンし、この地域がアメリカ美術史において果たした役割を初めて包括的に紹介しました。また、ローゼンタール財団からの資金提供により、2003年5月17日以降、特別展を除き入館料が無料化されました。

屋外展示施設

美術館のあるウォールナット・ヒルズにはシンシナティ劇場も位置しています。2020年6月時点では、エデンパーク通りとギルバート街の交差点付近から美術館の正面玄関までの高低差を利用した大規模な改修が進められています。この改修で、〈アートの上り坂〉（Art Climb）と呼ばれる屋外施設が新たに建設され、市民活動と芸術のための舞台として活用される予定です。完成すると、美術館の敷地は外部に開かれ、周辺地域との結びつきが強化され、屋外展示に適した作品の展示スペースが確保されます。

運営

美術館の常設展示室73室は無料で観覧でき、家族向けの体験型施設「ローゼンタール教育センター」（REC）も無料で利用できます。運営資金は、リチャード&ロイス・ローゼンタール財団、トーマス・J・エマーリー寄付金、シンシナティ・ファイナンシャルとシンシナティ保険会社の合同基金から拠出されています。教育プログラムには有料のものもあり、料金は大人と子供で異なります。特別展の観覧料は企画ごとに設定されています。

開館時間は、午前11時から午後5時までで、木曜日のみ午後8時まで開館しています。月曜日は休館です。駐車場は無料で利用できます。美術館の運営基金は2008年の8000万ドルから2011年の7000万ドルに減少しましたが、2014年には8700万ドルまで回復しました。

コレクション

美術館は西洋の名画を数多く所蔵しており、その中には以下の画家たちの作品が含まれます。

ホルヘ・イングレス
サンドロ・ボッティチェッリ（『ホロフェルネスの頭を持つユディト』）
マッテオ・ディ・ジョヴァンニ
ドメニコ・ティントレット（『ヴェネツィアの総督マリーノ・グリマーニの肖像』）
マッティア・プレーティ
ベルナルド・ストロッツィ（『ゴリアテの首を持つダビデ』）
フランス・ハルス
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ（『聖トマス・デ・ヴィラヌエバ』）
ピーテル・パウル・ルーベンス（『サムソンとデリラ』）
アールト・ファン・デル・ネール

近現代の画家の作品も豊富で、以下の画家が含まれます。

ジャン＝バティスト・カミーユ・コロー
ピエール＝オーギュスト・ルノワール
カミーユ・ピサロ
クロード・モネ（『ベル・イルの岩』）
フィンセント・ファン・ゴッホ
パブロ・ピカソ

アメリカの画家フランク・ドゥフェネクの作品も多数所蔵しています。

装飾美術と工芸品のコレクションは7000点を超え、以下の作家の作品が含まれます。

ポール・ド・ラメリー（イギリス）
カレン・ラモンテ（アメリカ）
白山谷喜太郎（日本出身、アメリカで活躍した陶磁器画工）
ジャン＝ピエール・ラッツ（ドイツ系アメリカ人の家具職人）

その他、多数の作家の作品を所蔵しています。

美術館は、幅広いジャンルの美術品を所蔵し、教育プログラムも充実させています。地域住民だけでなく、世界中からの訪問者にとって魅力的な文化施設となっています。

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