バルトロメ・エステバン・ムリーリョ

バルトロメ・エステバン・ペレス・ムリーリョの画業

バルトロメ・エステバン・ペレス・ムリーリョ（1617年 - 1682年）は、スペインのバロック期に活躍した著名な画家です。彼は17世紀のスペイン美術を代表する存在であり、甘美な聖母像や愛らしい子どもの絵をたくさん手がけ、その作品は今でも多くの人に愛されています。

経歴

ムリーリョは1618年にセビーリャに生まれ、民間医師の家庭に育ちました。14人兄弟の末っ子であり、幼少期に両親を失った彼は、姉夫婦のもとで育てられたと伝わっています。しかし、彼の生涯に関する具体的な情報には乏しい部分も多いのが実情です。

1645年、ムリーリョは初めて世に出る大規模な注文を受け、セビーリャのフランシスコ会修道院の装飾に取り組みました。1659年までフアン・デル・カスティーリョの指導を受け、その後も一時期マドリードに住んだとの説がありますが、実際には生涯の多くをセビーリャで過ごしました。彼は1682年にカディスの修道院にて制作中、足場から転落して亡くなりました。

画風の変遷

ムリーリョの初期の作品は、テネブリスモと呼ばれる暗い影と光のコントラストが特徴的でした。しかし、1650年代に入るとフランシスコ・エレーラの影響を受け、色彩が豊かになり、より柔らかく夢幻的な表現が見られるようになりました。この時期からは「スティロ・バポローソ」とも称される作風に移行し、薄ぼんやりとした印象が全体を覆い、彼の晩年の作品に顕著に現れています。

聖母マリアを題材とした「無原罪の御宿り」に関する作品が多く、特にセビーリャ美術館に所蔵される『フランシスコ会士たちの無原罪の御宿り』では、夢見心地のマリア像と彼女を囲む小天使たちの姿が未来のロココ美術を予感させるものとされています。加えて、ムリーリョは自身の子供たちを疫病で失っており、残された子供たちに対する愛情が彼の作品にも色濃く反映されています。

代表作

ムリーリョの作品には、多くの傑作が存在します。代表的なものには以下が挙げられます。

• - 『乞食の少年』 (1645年 - 1650年、ルーヴル美術館)
• - 『ブドウとメロンを食べる子供たち』 (1645年 - 1650年、アルテ・ピナコテーク)
• - 『聖母子』 (1650年 - 1660年頃、ピッティ美術館)
• - 『ロザリオの聖母』 (1650年 - 1655年頃、プラド美術館)
• - 『犬を連れた少年』 (1655年 - 1660年、エルミタージュ美術館)
• - 『善き羊飼い』 (1655年 - 1660年頃、プラド美術館)
• - 『エル・エスコリアルの無原罪の御宿り』 (1660年 - 1665年、プラド美術館)
• - 『フランシスコ会士たちの無原罪の御宿り』 (1668年、セビーリャ美術館)
• - 『貝殻の子供たち』 (1670年、プラド美術館)
• - 『アランフエスの無原罪の御宿り』 (1675年頃、プラド美術館)
• - 『ベネラブレスの無原罪の御宿り』 (1660年 - 1665年または1678年頃、プラド美術館)

このように、ムリーリョは多彩なテーマを持つ作品を数多く生み出し、その卓越した技術と感性によって、今なお人々の心をつかんで離さない存在となっています。

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