シーモア・ハーシュ

シーモア・ハーシュ：不屈の調査報道ジャーナリスト

シーモア・マイロン・ハーシュ（Seymour Myron "Sy" Hersh, 1937年4月8日 - ）は、アメリカ合衆国シカゴ出身の調査報道記者です。彼のキャリアは、権力に対する徹底的な追及と、タブーに挑戦する姿勢によって特徴づけられています。

生い立ちとジャーナリストへの道

ハーシュはシカゴで、リトアニア系ユダヤ人の両親のもとに生まれました。両親はイディッシュ語を話し、クリーニング店を営んでいました。シカゴ大学で歴史学を専攻した後、薬局チェーンのウォルグリーンで働いた経験を持ちます。

ジャーナリストとしての転機は1969年、ベトナム戦争中のソンミ村虐殺事件の暴露でした。当時、彼は「ディスパッチ・ニュース・サービス」という小さな個人通信社の記者として、借金をしながら証言者を求めて全米を奔走。この記事は『ザ・ニューヨーカー』に掲載され、1970年度のピューリッツァー賞を受賞しました。

ニューヨーク・タイムズでの活躍と数々のスクープ

ピューリッツァー賞受賞後、ハーシュはニューヨーク・タイムズ紙に特別記者として迎えられました。記事のノルマがないという異例の待遇で、彼はその才能をいかんなく発揮し、数々の大スクープをものにしました。

彼の代表的なスクープには、以下のようなものがあります。

CIAの国内スパイ計画「ケイオス作戦」の暴露: レジスタンス計画に繋がるものでしたが、記事の誤りが多かったとされ、ピューリッツァー賞は逃しました。
多国籍企業報道: ロッキード事件へと発展する端緒となりました。
プロジェクト・ジェニファー: ソ連原子力潜水艦回収作戦の内幕を暴きました。
新聞王ロバート・マクスウェルの正体とイスラエルの核武装: マクスウェルは報道直後に急死。記事にはイスラエルの核兵器保有（200発）や台湾の核武装といった重要な情報が含まれていました。
アブグレイブ刑務所における捕虜虐待: イラク戦争におけるアメリカ軍による捕虜虐待の実態を白日の下に晒しました。
大韓航空機事件の内幕: 事件の真相に迫る内容で、大きな反響を呼びました。
ラベル空軍大将による北ベトナム無断爆撃事件: 軍内部の不正を暴き出しました。
ノルドストリームのパイプラインへの破壊工作: 国際的な注目を集めました。

著書

ハーシュは、数多くの著書も発表しています。これらの著書は、彼の調査報道の成果をまとめたものであり、現代史の重要な証言として高く評価されています。

Chemical and Biological Warfare: America's Hidden Arsenal, (Bobbs-Merrill, 1968).
My Lai 4: A Report on the Massacre and its Aftermath, (Random House, 1970).
The Price of Power: Henry Kissinger in the Nixon White House, (Faber, 1983).
"The Target is Destroyed": What Really Happened to Flight 007 and What America Knew about It, (Random House, 1986).
The Samson Option: Israel's Nuclear Arsenal and American Foreign Policy, (Random House, 1991).
The Dark Side of Camelot, (Little, Brown, 1997).
Against All Enemies: Gulf War Syndrome, the War between America's Ailing Veterans and their Government, (Ballantine Publishing, 1998).
Chain of Command: the Road from 9/11 to Abu Ghraib, (HarperCollins, 2004).

シーモア・ハーシュの遺産

シーモア・ハーシュは、その長年にわたるキャリアを通じて、権力に対する監視と真実の追求を貫いてきました。彼の仕事は、ジャーナリズムの範疇を超え、社会に大きな影響を与え続けています。彼の勇気ある報道は、今後も多くのジャーナリストにインスピレーションを与え続けるでしょう。

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