シーラス SR20

シーラス SR20 (Cirrus SR20)

シーラス SR20は、アメリカのミネソタ州に拠点を置くシーラス・エアクラフト社が開発した、単発の低翼固定脚を持つ軽飛行機の一つです。この機体シリーズは『SRシリーズ』と呼ばれ、個人ユーザーはもちろん、フライトスクールでも積極的に導入されています。特に、エンジンを強化したSR22やターボチャージャー搭載のSR22Tと合わせて、次世代のベストセラー機の地位を確立しつつあります。

特徴と技術

SR20は、操縦桿にサイドヨーク式を採用し、操作性の向上を図っています。また、ガーミンのG1000Nxiを基にしたグラスコックピット『Cirrus Perspective +』を標準装備しており、視認性や情報表示が非常に優れています。さらに、自動操縦機能や緊急用のパラシュートシステムなど、安全性を高める装備が充実しています。これらの特徴により、特に法人向けには高高度飛行に対応した防氷装置や訓練用のアビオニクスのアップグレードオプションなどが提供されています。2019年以降は、内装の簡素化を図った訓練向けのモデル『TRAC』も登場し、使い勝手がさらに向上しています。

パラシュートシステム

SR20には、重要な安全装備として、シーラス・エアクラフト独自の緊急用パラシュートシステム（CAPS）が装備されています。このシステムは、万が一機体が操縦不能に陥ったり、エンジンが故障した場合に非常に重要な役割を果たします。具体的には、機体の背面からパラシュートを射出し、落下速度を緩和しながらの軟着陸を可能にします。このCAPSが適切に作動することで、高い確率で航空事故からほぼ無傷で生還することができるとされており、シーラス社のデータによると、2017年1月までに146人の命が救われたと報告されています。

市場での位置づけ

シーラス SR20は、個人ユーザー向けの小型機として、特にセスナ172などの競合機と比べて音響設備やキーレスエントリーなどの快適装備を充実させ、プレミアムなオプションも多用されています。そのため、個人オーナーの遊覧機としての人気が高まっています。プロ向けの練習機としては、ビーチクラフト・ボナンザのような機体が多採用されていますが、シーラス SR20は計器飛行訓練や現代的な旅客機に必要な高度なアビオニクス操作の訓練に対応しているため、複数の航空会社による養成機関でも採用が進んでいます。日本の民間フライトスクールでも、新たに導入されるケースが見られます。

軍用機としての採用

米軍においては、ターボプロップ機が主流の基本練習機として使用されていますが、SR20は初学者パイロットには最適とされ、アメリカ空軍の士官学校では『T-53A Kadet II』の名称でお試しフライトや初期の訓練に用いられることがあります。さらに、FTD（フライトシミュレーター）としてもRedbird製などのサードパーティ製品が利用されています。

スペック

シーラス SR20の主なスペックは以下の通りです。

• - 全幅: 11.67 m
• - 全長: 7.92 m
• - 全高: 2.71 m
• - 最大巡航速度: 155 kt
• - 実用上昇限度: 17,500 ft
• - 航続距離: 627 nm (75% Power at 8,000ft)
• - エンジン: ライカミング IO-390-C3B6 215HP
• - 使用可能な燃料の量: 56 gal
• - 有効積載量: 1,030 lb (467 kg)
• - 搭乗者: 最大5名

SR20は、多くの特長や装備が備わっており、飛行機の新たなスタンダードとしての役割を果たしています。

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