ジェイコブス・ラダー (セントヘレナ)

ジェイコブス・ラダー

ジェイコブス・ラダー（Jacob’s Ladder）は、セントヘレナ島に存在する歴史的な階段で、その名は聖書に登場する「ヤコブの梯子」に由来します。この階段は、南大西洋に位置するイギリスの海外領土、セントヘレナの港町ジェームズタウンと、ラダー・ヒル砦（Ladder Hill Fort）を結ぶ重要な交通手段として1829年に建設されました。

歴史的背景

この構造物は地元の技師J. W. Hoarによって設計されました。彼は、上記の港町から砦へと貨物を効率的に運ぶために、長さ281.6メートルのインクライン（傾斜鉄道）を導入しました。このインクラインは、鉄板で覆われたモミ製のレールの上を2両の車両が上下する仕組みです。階段と並行して、700段の歩行者用の階段が設けられ、利用者は車両を利用せずとも上に向かうことができました。上昇の傾斜は39度から41度の間であり、非常に急勾配です。

インクラインの動力は、3頭のロバによって提供され、これらの動物は上部に設置されたキャプスタンを回転させることで、車両に接続された鉄の鎖を引き上げました。しかし、インクラインの枕木はシロアリによる被害に遭い、1871年にはその運用が停止され、車両と関連施設は王立工兵軍団によって撤去されました。この結果、急勾配の階段だけが取り残されることとなり、その姿が「ジェイコブス・ラダー」と称されるようになりました。

その後、道路工事によって1段が埋もれてしまったため、現在の階段は699段になっています。2000年には階段の両サイドに照明が設置され、さらに2006年には改装が行われました。これにより、訪れる観光客や地元住民にとって使いやすく、安全な環境が整えられました。

文化的価値

ジェイコブス・ラダーは、現在第一級重要建造物（Grade I listed feature）として文化財に指定されています。このことは、島の歴史や文化にとって重要な意味を持つことを示しています。毎年開催される「島のランニングフェスティバル」では、参加者がこの階段を駆け上がる時間を競い合うイベントが人気を集めています。イベントには世界中から多くのランナーが参加し、競技の中には記録を手にする者もおり、2016年には5分16秒78という驚異的なタイムが記録されました。

まとめ

セントヘレナのジェイコブス・ラダーは、歴史的な背景を持つ美しい階段であり、今でも多くの人々に親しまれています。その歴史を知りながら訪れることで、単なる観光地を超えた深い感動が得られることでしょう。

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