ジェイコブ・ピアス

ジェイコブ・ピアス (Jacob Pierce)

ニュージーランド出身のラグビーユニオン選手。主にジャパンラグビーリーグワンの東芝ブレイブルーパス東京で、セカンドロー、すなわちロック (LO) のポジションを務めている。身長201cm、体重106kgというアスリートとして理想的な体格を持ち、現代ラグビーにおけるロックに求められる多様な役割を高いレベルでこなす選手である。ラインアウトでのジャンパーとしての役割はもちろんのこと、セットピースにおけるスクラムの要、さらにオープンプレーでのボールキャリアーや激しいタックル、ブレイクダウンでの貢献など、攻守両面においてチームに不可欠な存在となっている。

経歴と背景

1997年9月10日にニュージーランド最大の都市であるオークランドで生を受けた。彼の家庭はラグビーとの縁が深く、特に父のスコット・ピアス氏は、かつてプロフェッショナルなラグビー選手として活動していた。父スコット氏は、1980年代後半から1990年代にかけて、日本のラグビー界、具体的には当時の日本リーグでプレーした経験を持つ。日新製鋼やヤマハ発動機（現在の静岡ブルーレヴズの源流の一つ）といったチームに所属しており、日本のラグビー文化や生活に対する理解を持っていた人物である。父の存在は、ジェイコブが将来的に日本でのプレーを選択する上での背景の一つとなったと考えられる。

ジェイコブ自身も、幼い頃からラグビーに親しみ、その才能を早くから見出された。ニュージーランド国内のユース世代における有望株として注目され、世界のトッププレーヤーへの登竜門とも言えるU20ニュージーランド代表に選出される栄誉を得た。この世代別代表での経験は、彼の国際的な視野と高いレベルでの競争を経験する上で貴重なものとなった。

ニュージーランドでのプロキャリア

プロ選手としてのキャリアは、ニュージーランド国内の州代表選手権（NPC）に所属するノースハーバーで始まった。ここでシニアレベルでの実戦経験を積み、選手としての基盤を固めた。その活躍が認められ、南半球の強豪チームが集まるスーパーラグビーの舞台へとステップアップ。ブルーズに加入し、世界最高峰とされるプロリーグの一つで、トップ選手たちと共にトレーニングし、時には試合にも出場することで、自身の技術とフィジカルをさらに磨き上げた。ブルーズでの経験は、その後のプロキャリアにおいて大きな財産となった。

ジャパンラグビーリーグワンでの飛躍

2021年、ジェイコブ・ピアスは新たな挑戦の地として日本を選び、再編成された日本のプロラグビーリーグ、ジャパンラグビーリーグワンに参加する東芝ブレイブルーパス東京への移籍を発表した。チームはリーグワンのディビジョン1に所属し、日本のトップリーグとして新たなスタートを切る準備を進めていた。

来日後、ジェイコブはすぐにチームに適応し、その実力を発揮した。リーグワンの記念すべき開幕節となった2022年1月8日の東京サントリーサンゴリアス戦で、彼は先発メンバーとして出場。これが日本における公式戦での初めてのプレーとなった。強豪サンゴリアスを相手に、持ち前のフィジカルと運動量を遺憾なく発揮し、チームの勝利に貢献した。

リーグワン初年度となった2022シーズン、ジェイコブは東芝ブレイブルーパス東京の主要なフォワードとして、ほぼ全ての試合に出場し続けた。特にラインアウトでの安定したキャッチや、広いエリアをカバーする運動量、そして相手アタックに対する厳しいディフェンスが高く評価された。そのシーズンを通しての活躍は、ラグビーファンや専門家からの注目を集め、シーズン終了後のリーグワンアワードにおいて、その年のリーグで最も活躍した15人の選手として「ベスト15」に選出されるという快挙を成し遂げた。これは、彼が来日初年度にして日本のトップレベルの選手の一人として確固たる地位を確立したことを証明するものである。

東芝ブレイブルーパス東京での現在

現在、ジェイコブ・ピアスは東芝ブレイブルーパス東京のフォワード陣において、中心的な存在としてチームを牽引している。ロックとして求められるセットプレーの安定供給はもちろん、フィールドプレーでの貢献度も非常に高く、チームの攻撃や防御システムにおいて重要な役割を果たしている。その身長とフィジカルを活かした突破力や、ジャッカルといったブレイクダウンでの献身的なプレーは、チームにとって大きな武器となっている。

若手ながらも、ニュージーランドと日本という異なるラグビー文化での経験を持ち、特に日本でのわずか数年間でリーグトップレベルの選手として認知された彼のキャリアは、今後も多くの注目を集めるだろう。父がかつて日本の地で培った縁を引き継ぎ、ジェイコブ・ピアスは東芝ブレイブルーパス東京、そして日本のラグビー界で、更なる高みを目指し挑戦を続けている。彼の今後の活躍から目が離せない。

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