ジェイコブ・リース＝モグ

ジェイコブ・ウィリアム・リース＝モグ（1969年5月24日生）は、イギリスの政治家であり、保守党の主要人物です。ノース・イースト・サマセット選挙区から庶民院議員に選出され、2010年から2024年まで議席を維持しました。政界では強硬な伝統主義者、社会保守主義者として知られ、その独自の言動はしばしば注目を集めます。

生い立ちと初期キャリア

ロンドン・ハマースミスに生まれたリース＝モグ氏は、ジャーナリストで貴族の父ウィリアム・リース＝モグを持ち、幼少期から恵まれた環境で育ちました。名門イートン校を経て、オックスフォード大学トリニティ・カレッジで歴史学を専攻。大学在学中にはオックスフォード大学保守協会の会長を務めました。大学卒業後は投資銀行、次いでアセットマネジメント会社で勤務し、ヘッジファンド運用会社サマセット・キャピタル・マネジメントを共同設立するなど、実業界で多額の資産を築きました。

政治家としての歩み

リース＝モグ氏は実業家として成功を収めた後、政界に転身しました。初期の総選挙では苦杯をなめましたが、2010年に満を持して庶民院議員に初当選を果たしました。議会では、ユーモアを交えた独特の演説スタイルや、ときに議事妨害とも取れる長時間の発言で知られるようになりました。キャメロン政権下では、政府方針に反対票を投じることも多く、党内で反骨精神を持つ議員の一人として認識されていました。

ブレグジットへの関与

リース＝モグ氏のキャリアにおいて、欧州連合からの離脱（ブレグジット）は中心的なテーマでした。彼は熱心な欧州懐疑派であり、2016年の国民投票では離脱支持を積極的に訴えました。保守党内のブレグジット強硬派グループである欧州研究会（ERG）の議長に就任し、テリーザ・メイ首相のブレグジット案に対しては「ブレグジットを骨抜きにする」と猛烈に反対しました。合意なき離脱も辞さない「クリーン・ブレグジット」を主張し、メイ首相の不信任案提出の中心人物となります。ブレグジット関連では、ビジネス上の利益や、ドイツの右派政党AfDの主張をツイートして批判を受けるなど、物議を醸す場面もありました。

要職の歴任と評価

ボリス・ジョンソン氏が保守党党首・首相に就任すると、リース＝モグ氏は庶民院院内総務および枢密院議長として初めて閣僚入りしました。その後、EU離脱担当相、ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣といった主要なポストを歴任しました。これらの役職に就く一方で、グレンフェル・タワー火災に関する失言や、在宅勤務の公務員への批判的な言動など、多くの論争を引き起こしました。特に公務員への対応は「下品で侮辱的」と批判されました。ウェールズ語を「外国語」と呼んで非難されたこともあります。これらの言動から、「18世紀の名誉会員」といった皮肉交じりの愛称で呼ばれることもあります。

政策・主張

彼の政治観は、伝統主義、社会保守主義、ナショナリズムを特徴とします。自由市場経済を支持する一方で、国家介入の必要性も認めるという複雑な一面も持ち合わせています。社会問題に関しては、ローマ・カトリック教会の教えに従い、同性婚や妊娠中絶に反対の立場を取っています。ただし、これらの法改正については現実的ではないとの見方を示しています。環境問題に対しては懐疑的で、気候変動への適応や化石燃料の活用を主張し、再生可能エネルギーには批判的です。移民問題では、厳しい管理政策とEU市民の自由移動廃止を支持しました。

パブリックイメージと私生活

リース＝モグ氏は、その時代錯誤とも評される上流階級風の物腰や話し方、意識的に伝統主義的な態度を取ることで、一種のキャラクターとして国民に認識されています。メディアへの露出も多く、ラジオ番組のパーソナリティを務めたり、SNSを積極的に活用したりしています。彼に対する評価は二極化しており、信念を貫く政治家として支持される一方、「反動的」「徹底的に現代的な偏屈者」といった批判も根強く存在します。私生活では、多年にわたり仕える乳母に子供たちの世話を任せていると公言し、育児への関与を問われて論争になったこともあります。クラシックカーやクリケットを愛好しています。2024年7月の総選挙では、長年務めた議席を失いました。

ジェイコブ・ウィリアム・リース＝モグは、イギリス政治においてブレグジットを巡る激動期に主要な役割を担い、その独特な個性と強硬な主張によって、常に注目を集める存在であり続けました。彼の政治キャリアは、その信念と同時に、物議を醸す言動や保守的な価値観の提唱によって特徴づけられています。

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