ジェイルバード

ジェイルバード（Jeilbird）

1979年にアメリカの作家カート・ヴォネガットによって発表された『ジェイルバード』は、アメリカの社会的・歴史的事件を背景に、主人公ウォルター・F・スターバックの人生を描く長編小説です。作品の中で語られるのは、労働争議から始まり、第二次世界大戦、赤狩り、さらにはウォーターゲート事件に至るまで、さまざまな歴史的転機に巻き込まれるウォルターの数奇な運命です。

あらすじ

ウォルターはクリーブランドの資本家アレグザンダー・ハミルトン・マッコーンの使用人の息子として生を受け、ハーバード大学に進学します。大学卒業後は連邦政府で働き、第二次世界大戦後間もなく、ドイツでルースと出会い結婚することになります。しかし、彼の人生は順調とはいかず、友人リーランド・クルーズの証言により、1953年に政府の職を失うことに。その後は妻の仕事を支えながら、失業生活を送ります。

1970年になって、ウォルターは「青少年問題特別顧問」という新たな職を得ますが、1972年に発生したウォーターゲート事件に巻き込まれ、再び投獄されます。2年間の刑務所生活を経て出所した際、彼はかつての恋人であり、今は超巨大企業RAMJACの大株主であるメアリー・キャスリーン・オルーニーと再会します。メアリーはある計画をウォルターに託けますが、悲劇的な運命が二人を待っていました。

メアリーの死後、彼女からの遺言により、RAMJACの富をアメリカ人民に寄贈するよう求められますが、ウォルターはその内容を世間に公表しません。その結果、2年後、彼女の死が明らかになり、企業は解体され競売にかけられることになります。そして、ウォルターは遺言隠蔽の罪で再び刑務所に送られてしまいます。

主な登場人物

• - ウォルター・F・スターバック: 本作の主人公かつ語り手。彼の人生や行動を通じて、アメリカ社会の苦悩と矛盾が描かれます。
• - アレグザンダー・ハミルトン・マッコーン: 裕福な資本家であり、ウォルターの雇い主。彼の言語障害と労働争議の経験がウォルターの人生に影響を与えます。
• - ルース: ウォルターの妻であり、ナチスによって強制収容所に入れられた過去を持ちます。アメリカに戻ってからは室内装飾家として活躍します。
• - リーランド・クルーズ: ウォルターの幼馴染で、共に政府で働いていたが、かつての思想によってウォルターは危機に陥ります。
• - メアリー・キャスリーン・オルーニー: ウォルターのかつての恋人で、共産主義者。後に巨大企業の大株主となります。

用語解説

• - RAMJAC: 本作に登場する架空の巨大企業で、資本主義社会における巨大資本の象徴的存在として描写されています。ウォルターや他の登場人物がこの企業に関与することで、彼らの運命が大きく変わる皮肉な展開が展開されます。

この小説を通じて、カート・ヴォネガットは社会の矛盾を鋭く描き出しつつ、個人の運命と歴史の交差点を探求しています。ウォルターの物語は、多くの読者に共鳴を呼び起こし、時代を超えたテーマを提供しています。

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