ジェス・ウィラード

ジェス・ウィラード（Jess Willard, 1881年12月29日 - 1968年12月15日）は、アメリカ合衆国カンザス州出身のプロボクサーであり、その並外れた体格から「ポタワトミーの巨人（The Pottawatomie Giant）」として知られました。身長2メートルという巨漢は、当時のボクシング界においても際立った存在でした。

1911年にプロデビューを果たしたウィラードは、その恵まれた体格と強打を武器に頭角を現しました。そして1915年4月5日、キューバのハバナで、当時の世界ヘビー級王者であったジャック・ジョンソンと対戦し、26ラウンドに及ぶ激闘の末、KO勝利を収め、見事世界ヘビー級王座を奪取しました。この勝利は、ウィラードのキャリアにおける最大のハイライトであり、彼が世界的なボクサーとして名を馳せるきっかけとなりました。

しかし、ウィラードの栄光は長くは続きませんでした。1919年7月4日、オハイオ州トレドで行われた試合で、ジャック・デンプシーと対戦。この試合は「トレドの惨劇」として知られ、ウィラードはデンプシーの圧倒的な攻撃の前に3ラウンド終了KO負けを喫し、王座を失いました。この試合での敗北は、ウィラードのキャリアにおける大きな転換点となり、彼の全盛期は終焉を迎えることになりました。

ウィラードはその後もリングに上がり続けましたが、かつての輝きを取り戻すことはありませんでした。1926年に引退するまでの間、彼の戦績は36戦24勝（21KO）7敗1分4無判定という記録を残しました。ウィラードのボクシングスタイルは、その体格を生かした力強いパンチが特徴でしたが、その巨体ゆえに機動性に欠けるという弱点も抱えていました。

引退後、ウィラードは静かな生活を送りましたが、そのキャリアはボクシング史において重要な記録として語り継がれています。特に、ジャック・ジョンソンを破って世界ヘビー級王座を獲得したこと、そしてジャック・デンプシーに惨敗した「トレドの惨劇」は、ボクシングファンにとっては忘れられない出来事です。ジェス・ウィラードは、その巨体と歴史的な試合を通じて、ボクシング史に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。

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