ジェネシス (タリスマンのアルバム)

タリスマン『ジェネシス』：セカンド・アルバムの軌跡

『ジェネシス』（Genesis）は、スウェーデン出身の実力派ヘヴィメタル・バンド、タリスマンが1993年に発表した通算2作目のスタジオ・アルバムである。彼らにとってキャリアの重要な節目となる作品として、前作に続く進化の方向性を示すものとなった。

制作背景とメンバー編成

本作のレコーディングは、新たなラインナップで臨まれた。特に注目すべきは、後にオーペスなどでも活躍するフレドリック・オーケソンが新ギタリストとしてバンドに迎え入れられたことである。彼の加入により、タリスマンのサウンドに新たな息吹が吹き込まれた。

また、当時のタリスマンには正式な専任ドラマーがおらず、バンドのリーダーであるベーシストのマルセル・ヤコブが、自らドラム・パートのプログラミングを担当して制作が進められたという事情がある。この独自の体制での録音完了後、バンドは日本での公演が決定したことに伴い、元トリートで活動していたジェイミー・ボーガーをドラマーとして正式に迎え入れた。この体制変更は、その後のタリスマンの活動に影響を与えることとなる。

チャート成績と音楽性への評価

『ジェネシス』は、母国スウェーデンでも一定の商業的成功を収めた。1993年3月10日付のスウェーデン国内のアルバム・チャートでは初登場で27位を記録。さらに翌週の3月24日付では、最高順位となる24位まで上昇し、チャート圏内に留まった。

音楽専門誌からの評価も高く、『CDジャーナル』のミニ・レビューでは、その音楽性に対して賛辞が贈られている。評では「空を舞うようなコーラスワーク」や「めくるめくようなメロディ展開」が、リスナーを決して飽きさせない楽曲構成と共に展開されている点が指摘された。加えて、作品全体から「北欧特有の音楽的血脈」が脈々と感じられる、と高く評価されている。

再発とボーナス・トラック

本作は、その質の高さから後年も再評価され、新たなフォーマットでリリースされている。特に、2012年にスウェーデンで発売されたリマスターCDは、ファンにとって価値の高い内容となった。このリマスター盤には、オリジナル発表時に日本盤にのみ収録されていたボーナス・トラック「ラン・ウィズ・ザ・パック」（フリーのメンバーとして知られるポール・ロジャースの楽曲カヴァー）が初めて本国盤にも収録された。

さらに、この2012年盤では、1990年に制作されたタリスマンのデモ音源4曲が追加収録された。ただし、これらのデモ音源はオリジナルの録音をそのまま使用したのではなく、2012年夏に改めて録音されたギターとドラムスが差し替えられているという特殊な編集が施されている。これらの追加要素により、合計16曲を収録した拡張版としてリリースされた。

日本国内でも、2014年に再発CD（品番：MICP-11182）が登場し、これらのボーナス・トラックを含む内容で提供され、再び多くの音楽ファンの手に届く機会が生まれた。

参加ミュージシャン

本作のサウンドを構築した主要なミュージシャンは以下の通りである。

• - ジェフ・スコット・ソート：ボーカル、バッキング・ボーカル
• - フレドリック・オーケソン：リードギター、リズムギター
• - マルセル・ヤコブ：ベース、リズムギター、ドラム・プログラミング、バッキング・ボーカル

さらに、アルバムには楽曲に彩りを加えるアディショナル・ミュージシャンも参加している。

• - ユリー・グロー：ピアノ（特に「オール・アイ・ウォント」）、バッキング・ボーカル（「ギヴ・ミー・ア・サイン」「ロング・ウェイ・トゥ・ゴー」に参加）
• - ジェイク・サミュエルズ：バッキング・ボーカル（「カミン・ホーム」「ユー・ダン・ミー・ロング」に参加）

『ジェネシス』は、タリスマンの歴史において、新たなメンバーを迎えた変化期でありながら、彼らの持ち味であるメロディアスでパワフルなサウンドを確立した重要な作品と言えるだろう。

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