ジェラール・ウーリー

ジェラール・ウーリー（Gérard Oury）は、1919年4月29日にフランスで誕生し、2006年7月20日に87歳で亡くなった、フランスの著名な映画監督、俳優、脚本家です。

ヴァイオリニストのセルジュ・トノンボーを父に、ジャーナリストのマルセル・ウーリーを母に持ち、演劇の世界に足を踏み入れました。フランス国立高等演劇学校で演技を学び、その後、第二次世界大戦が始まる直前に、歴史ある国立劇団コメディ・フランセーズのメンバーとなりました。しかし、戦時中にフランスに成立したヴィシー政権下でユダヤ人迫害法が施行されると、その危険から逃れるためスイスへの移住を余儀なくされます。

1945年からは俳優としての活動を本格的に再開し、舞台や映画で活躍しました。さまざまな作品に出演する中で、表現者としての幅を広げていきます。そして1959年、自身初の監督作品となる映画『熱い手』を手がけ、新たなキャリアをスタートさせました。

監督業に軸足を移してからは、その非凡なコメディセンスが開花します。特に、フランスを代表する二大コメディアン、ブールヴィルとルイ・ド・フュネスとの協業は、彼のフィルモグラフィにおいて最も輝かしい成功をもたらしました。彼らを主演に起用した1965年の映画『大追跡』は商業的に大ヒットを記録。さらにその翌年、1966年に公開された『大進撃』は、フランス映画史に名を刻む驚異的な成功を収めました。

『大進撃』は、当時1939年の大作『風と共に去りぬ』が長年保持していたフランス国内での観客動員数記録を更新し、1727万人という圧倒的な数字を叩き出しました。この記録は、その後1997年にジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』が公開されるまで、実に30年以上にわたり破られることがありませんでした。

これらの大ヒットにより、ジェラール・ウーリーはフランスにおけるコメディ映画の巨匠としての地位を不動のものとしました。その後も、コメディアンを巧みに活かした『大頭脳』（1969年）、『大乱戦』（1971年）、『ニューヨーク←→パリ大冒険』（1973年）、『J＝P・ベルモンドの エースの中のエース』（1982年）、『大迷惑』（1987年）といったヒット作を次々と生み出し、多くの観客に笑いを届け続けました。

私生活においては、長年にわたり女優のミシェル・モルガンとパートナーシップを築きました。また、彼の娘であるダニエル・トンプソン（ミシェル・モルガンの継子）は映画監督・脚本家として、孫のクリストファー・トンプソンも映画監督・脚本家・俳優として、それぞれ映画界で活躍しており、ウーリーの芸術的な血筋は受け継がれています。

フランスの映画界に多大な貢献をし、特に国民的な人気を誇るコメディ映画を多数世に送り出したジェラール・ウーリーは、2006年7月20日、南フランスのサントロペにて87年の生涯を閉じました。彼の作品は、今なお多くの人々に親しまれています。

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