ジェリカン

ジェリカンについて

ジェリカンは、プレス加工された鋼板を用いて作られた燃料容器で、その名は第二次世界大戦の北アフリカ戦線に由来しています。当時、イギリス軍がドイツ軍の20リットルの燃料缶を「ジェリィカン」と呼んだことがこの容器の名称の起源となっています。このデザインは、持ち運びやすさと使い勝手の良さが求められた結果誕生しました。

歴史的背景

ジェリカンのオリジナルは、1930年代中ごろにドイツのSchwelmer Eisenwerk Müller & Co AGが開発しました。技術陣のリーダーであるフィンツェンツ・グリュンフォーゲルのもと、国防軍のための標準的な燃料容器が形成され、初期生産では5,000個が作成されました。1937年からはドイツ軍に本格的に配備され、この新しい容器の優れた携帯性と給油の簡便さが評価されました。従来の200リットルのドラム缶や三角形の20リットル缶と比較し、軽量で扱いやすかったことが大きな特徴です。

1940年からは、この設計を水運搬用の容器にも応用され、乾燥地域での軍事作戦において重要な役割を果たしました。重量や容量のバランスを考慮したこの容器は、兵士たちがポンプなしで直接燃料を注ぎ込める利便性を提供しました。

ジェリカンの仕様

ジェリカンは、容量20リットル、縦465mm、横340mm、幅160mmの筐体を持ち、側面には仕様に応じた特徴的なへこみが設けられています。初期のものから変更されたデザインは、内容物の膨張を吸収できるようになっています。また、上部には「Kraftstoff 20L Feuergefährlich」といった危険標識がプレスされており、誤使用を防ぐ工夫が凝らされています。

注入口の栓はスクリューキャップではなく、バネ式の開閉方式が採用されており、迅速な給油が可能です。この工夫により、使用中における効率が大幅に向上しました。さらに、持ち運びの利便性を考慮し、3本の取っ手が取り付けられており、一人でも二人でも運搬が容易となっています。

各国での採用

第二次世界大戦中、イギリス軍はドイツ軍のジェリカンから影響を受け、1942年から本格的に模倣品を製造・導入しました。アメリカ軍も1931年からの使用していた円筒型の燃料缶を改良し、独自の軽量版ジェリカンを設計しました。アメリカ式のジェリカンは重さがイギリスやドイツ製品よりも軽く、当初は「ブリッツカン」と呼ばれていました。

アメリカ軍では、1980年代にポリ容器に移行しましたが、依然として多くの国でドイツ軍仕様のジェリカンが使われ続けています。例えば、自衛隊は米軍の金属製ジェリカンを調達・利用しているほか、ソ連軍もドイツ製品に類似した容器を生産し、ワルシャワ条約機構での標準品となりました。

現在でも各国でその形状や機能が評価され、さまざまな運搬手段として使われているジェリカン。携行缶やポリタンクといった関連アイテムと並んで、戦時下だけでなく平和な時代にも重要な役割を果たし続けています。

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