ジェリコ・マイル/獄中のランナー

ストーリー

本作は、終身刑で服役中のマーフィー(ピーター・ストラウス)が、刑務所の運動場で驚異的な走力を見せることから物語が始まります。彼の才能に気づいたカウンセラー(ジェフリー・ルイス)は、陸上コーチ(エド・ローター)を呼び、タイムを計測します。その結果、マーフィーはオリンピックレベルの記録を叩き出します。

カウンセラーは、マーフィーにロサンゼルスオリンピックへの挑戦を勧めますが、彼は全く興味を示しません。マーフィーにとって、唯一の友人は黒人のスタイルズ(リチャード・ローソン)です。ある日、スタイルズは、生まれたばかりの娘に会いたい一心で、刑務所内で顔の利く白人グループのリーダーであるドクターD(ブライアン・デネヒー)に面会の便宜を頼みます。マーフィーは忠告しますが、スタイルズは聞き入れません。結局、面会に現れたのは見知らぬ女性で、彼女が密輸しようとしたドラッグが発見されます。この一件で、スタイルズは白人グループから逆恨みされ、命を奪われてしまいます。

友人殺害の復讐を誓ったマーフィーは、オリンピック選考会への参加と引き換えに、白人グループの作業場で30分間一人にして欲しいとカウンセラーに取引を持ちかけます。作業場を破壊し、隠されていた大量の現金を見つけ出したマーフィーは、ドクターDの目の前でそれを燃やし、復讐を果たします。

一方、黒人グループのコットン(ロジャー・E・モーズリー)は、マーフィーの本心を探るため彼を殴り倒します。しかし、マーフィーが「あいつとは兄弟同然だった」とつぶやいた言葉を信じ、彼への協力を約束します。黒人やヒスパニックのグループは運動場を整備し、食堂では食べ物を分け与えてマーフィーを支援します。見返りを求めずに尽くしてくれるカウンセラーや囚人たちに心を打たれたマーフィーは、彼らの期待に応えようと、オリンピック選考会に向けて猛特訓を開始します。しかし、刑務所にやってきた選考員たちは、重罪犯をオリンピックに出場させることに難色を示すのでした。

作品概要

本作は、マイケル・マン監督のデビュー作です。ABCは、テレビドラマ「女刑事ペパー」のエピソードを監督したマンの演出力を高く評価し、テレビ映画の監督を依頼しました。当初、マンはABC所有の脚本「白銀に賭ける恋」の映画化を準備していましたが、主演予定のデビッド・ソウルが脊髄を損傷したため、企画が中断。代わりに提案されたのが「ジェリコ・マイル」でした。（ちなみに「白銀に掛ける恋」は1980年にジェリー・ロンドン監督により映画化されています。）

マン監督と原作者のパトリック・J・ノーランは、脚本執筆のために何度もフォルサム刑務所に足を運びました。マン監督は、過去に「ストレート・タイム」(1978)の取材で同刑務所を訪れており、受刑者のエドワード・バンカーと面識がありました。刑務所では、白人、黒人、ヒスパニックがそれぞれ小さな社会を形成していることに驚いたといいます。また、囚人たちの独房の壁に貼られていた妻や赤ん坊の写真が非常に印象に残ったと語っています。これらの経験は、刑務所のリアルな描写に大いに役立ちました。

撮影期間は延べ21日間で、そのうち19日間が刑務所内で行われました。刑務所では日常的に暴力事件が起きていましたが、エドワード・バンカーが各グループのリーダーに事前に協力を依頼したことで、撮影中に大きな騒ぎは起こりませんでした。刑務所のシーンには、28人の囚人が役者として参加し、2時間ごとに人数を確認する必要がありましたが、皆協力的で撮影は順調に進みました。しかし、撮影期間中に刑務所内の離れた場所で殺人事件が1件発生し、囚人同士の傷害事件も毎日のように起こっていたといいます。

本作は1979年のエミー賞で作品賞にノミネートされ、主演男優賞、脚本賞、編集賞を受賞しました。マイケル・マン監督には、本作の後、20作品以上の監督オファーが来ましたが、すべて断り、次作「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー|ザ・クラッカー_真夜中のアウトロー」の製作に着手しました。

キャスト

マーフィー: ピーター・ストラウス
カウンセラー: ジェフリー・ルイス
陸上コーチ: エド・ローター
スタイルズ: リチャード・ローソン
ドクターD: ブライアン・デネヒー
コットン: ロジャー・E・モーズリー

脚注

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出典

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外部リンク

ジェリコ・マイル/獄中のランナー - IMDb（英語）
ジェリコ・マイル／獄中のランナー - allcinema

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