ジェリーの夢遊病

ジェリーの夢遊病：トムとジェリーの珍騒動

1966年、チャック・ジョーンズ監督によって制作された名作アニメ『トムとジェリー』シリーズの一編『ジェリーの夢遊病』（原題：Jerry, Jerry, Quite Contrary）は、深夜の静寂を破る、予測不能な騒動劇です。

物語は、深夜2時に始まります。リビングで安らかに眠るトム。一方、巣穴で眠りについたはずのジェリーは、なんと夢遊病を発症。目を閉じたまま、リビングへと忍び寄ります。

ジェリーの悪夢が始まりました。彼は眠ったまま、トムのヒゲを引っ張り、顔面を殴打するという、とんでもない行為に出ます。不意打ちを食らったトムは驚きながらも、夢遊病のジェリーを巣穴へと戻そうとしますが、ジェリーの目を覚ましてしまい、ビリヤードの球を扱うように、巣穴へ投げ込みます。

しかし、ジェリーの夢遊病は治まらず、数十分おきに巣穴から這い出てはトムにいたずら。トムは何度もジェリーを巣穴に戻し、入り口を厳重に封鎖します。さすがに、眠るととんでもないことをしてしまうことに気づいたジェリーは、眠気覚ましにコーヒーをがぶ飲みしますが、全く効果はありません。そして再び眠りに落ちたジェリーは、巣穴から出て、今度はトムにレンガを投げつけるのです。

激怒したトムはジェリーを巣穴に追い込み、入り口を頑丈に塞ぎます。しかし、3時40分、その厳重な戸締りをものともせず、ジェリーは再び現れます。今度は、トムの尻尾に毛糸を巻きつけ、家中に毛糸を張り巡らせ、その先に金床をつるし、屋根から煙突へと落とすという、壮大な悪夢を繰り広げます。金床の重みに引っ張られたトムは、家の中を引きずり回され、最後は煙突から真っ逆さまに落下、金床で頭を強打。

とうとう堪忍袋の緒が切れたトムは、夢遊病ネズミから逃れるため、家出を決意。すると、寝間着姿のジェリーも、眠ったままトムの後を追いかけていくのでした。

この作品では、トムとジェリーのいつもの追いかけっことは異なる、不思議な展開が魅力です。夢遊病という特殊な状況下での、トムとジェリーのやり取りは、笑いを誘うだけでなく、どこか切ない雰囲気も醸し出しています。ジェリーは悪意なくトムを苦しめる、まるで悪夢のような状況に陥っているのです。トムもまた、理不尽な攻撃に耐えかねて家出してしまうという、哀愁漂う結末を迎えます。

『ジェリーの夢遊病』は、チャック・ジョーンズ監督の独特なユーモアセンスと、トムとジェリーのキャラクター性を存分に活かした、忘れがたい一作です。夢遊病という非現実的な要素を取り入れながらも、現実的なキャラクターの描写と、予測不能な展開が見事に融合し、観る者を飽きさせません。1980年頃には日本テレビ系で放映され、多くの人々に愛されてきました。DVDにも収録されているので、ぜひ一度ご覧になってみてください。

登場キャラクター:

トム: ジェリーにいたずらされ続け、最後は家出してしまう猫。
ジェリー: 夢遊病でトムにいたずらをするネズミ。

関連事項:

トムとジェリー
チャック・ジョーンズ
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
カートゥーン
* 夢遊病

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