ジェリー・クォーリー

ジェリー・クォーリー：激闘の人生

ジェリー・クォーリー（Jerry Quarry、1945年5月15日 - 1999年1月3日）は、アメリカ合衆国出身のプロボクサー。世界ヘビー級1位にまで上り詰めた実力者であり、1960年代から70年代にかけて、ヘビー級のトップ戦線で活躍しました。

当時、ヘビー級は黒人選手が中心でしたが、クォーリーは白人選手として、その中に割って入るように多くの強豪と拳を交えました。フロイド・パターソン、ジミー・エリス、ジョー・フレージャー、モハメド・アリ、ケン・ノートンといった、錚々たる世界王者たちとの激闘は、今もボクシングファンの間で語り継がれています。

プロボクサーとしての軌跡

1965年7月5日、クォーリーはプロボクサーとしてのキャリアをスタートさせます。1967年6月9日には、ベテランとなっていた元世界王者フロイド・パターソンと対戦し、引き分けに終わります。しかし、その1か月半後の再戦では、クォーリーが大差判定で勝利を収めました。

1968年4月27日、空位となっていたWBA世界ヘビー級王座をかけて、ジミー・エリスと対戦。しかし、僅差の判定で敗れ、王座獲得はなりませんでした。1969年6月23日には、ジョー・フレージャーの持つニューヨーク州公認世界ヘビー級王座に挑戦しましたが、7回TKO負けを喫しました。

同年12月12日には、全盛期のモハメド・アリを苦しめた強豪、ジョージ・シュバロに7回TKO負け。苦しい時期が続きますが、1970年6月17日には、デビュー以来24連続KO勝ちを記録していたマック・フォスターに6回KO勝ちし、見事な復活を遂げました。

1970年10月26日、モハメド・アリの復帰戦の相手に選ばれますが、3回に左目の上をカットし、ドクターストップによるTKO負け。1年8か月後の1972年6月29日には、アリの持つ北米ヘビー級タイトルに挑戦しますが、7回TKO負けで王座獲得はなりませんでした。

その後は王座に絡むことなく、1975年3月24日、ケン・ノートンに5回KO負けを喫した試合を最後に、一度は引退を決意します。

引退、そして復帰

1977年に一度だけ現役復帰し勝利を収めますが、再び引退。しかし、離婚やビジネスの失敗が重なり、経済的に困窮。1983年には、ボクシングによる脳へのダメージが原因と思われる脳萎縮などの症状が確認されます。37歳で6年ぶりに現役復帰を果たし2試合を戦いますが、再び引退しました。

その後、ボクシングで稼いだ資金を使い果たし、1990年頃には生活保護を受ける生活を送ります。再び現役復帰を決意しますが、健康上の問題から、ほとんどの州で試合のライセンスが発行されませんでした。しかし、コロラド州での試合許可が下り、1992年10月30日に47歳で9年ぶりに復帰するも敗戦。この試合を最後に、現役を引退しました。

1995年には、国際ボクシング名誉の殿堂博物館に選出され（世界ボクシング殿堂にも選出）、その功績が称えられました。

引退後の苦難

引退後は、現役時代の激闘が原因で、パンチドランカー症候群に苦しめられました。1983年にはCTスキャンで脳萎縮が確認され、アルツハイマー病や認知症を発症。晩年は、兄ジェームスの手厚い介護を受けながら生活を送りました。クォーリーには4人の兄弟がおり、ジェームス以外はボクシングをしていましたが、弟のマイクもパンチドランカー症候群を患い、2006年に54歳で亡くなっています。別の弟ボビーも、ボクシングのダメージが原因と思われるパーキンソン病を患いました。

1998年12月28日、肺炎のため入院。意識を回復することなく、1999年1月3日、53歳という若さで生涯を閉じました。

ジェリー・クォーリーは、世界王者にはなれませんでしたが、その勇敢な戦いぶりと不屈の精神は、多くのボクシングファンに感動を与えました。リング外での苦難も経験しましたが、最後までボクシングを愛し続けた彼の人生は、これからも語り継がれることでしょう。

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