ジェレミー・バージェス

ジェレミー・バージェス：モーターサイクル界の伝説的エンジニア

ジェレミー・バージェス（1953年生まれ）は、オーストラリア、アデレードヒルズ出身のモーターサイクルレースエンジニアです。その名を世界に知らしめたのは、偉大な3人の世界チャンピオン、ワイン・ガードナー、ミック・ドゥーハン、そしてバレンティーノ・ロッシと共に築き上げた輝かしい功績です。長年に渡るキャリアにおいて、彼は数々の勝利に貢献し、モーターサイクルレースの歴史に大きな足跡を残しました。

走り始めた少年時代から世界の舞台へ

農場を営む家庭で育ったバージェス少年は、幼い頃から機械いじりに親しみ、8歳で運転を経験、12歳で自身の車を手に入れるなど、並外れた機械への関心を示しました。学校卒業後わずか3日で、1969年型スズキT500コブラを入手し、1972年から1979年にかけてオーストラリアのサーキットでレース活動を開始します。グレッグ・ハンスフォード、ウォーレン・ウィリング、ケニー・ブレイク、ハリー・ヒントンら著名ライダーと共に競い合ったこの時代は、彼自身のライダーとしてのキャリアのピークでもありました。自作のスズキRG500での活躍は、後のエンジニアとしての道を切り開く重要な経験となりました。

ヨーロッパへの挑戦とヘロン・スズキ時代

1980年、さらなる高みを目指し、バージェスはヨーロッパへ渡ります。しかし、グランプリへの出場は年齢と資金の面から現実的ではないと判断。イギリスで滞在中、友人の紹介でテキサコ・ヘロン・スズキチームのメカニックとして働くことになります。既にオーストラリアやニュージーランドでのレース活動を通じて、グレーム・クロスビーやランディ・マモラといったライダー、そしてミック・スミスやジョージ・ブコマノビッチといったチーム関係者と面識があったことは、彼のスムーズなチーム加入を後押ししました。

マモラのメカニックとして活躍を開始したバージェスは、ベルギーGPでのマモラの初優勝に貢献します。1983年までスズキで経験を積み、その後、21年間在籍するホンダに移籍しました。

ホンダ時代：チャンピオンたちの影の立役者

ホンダではまず、ロン・ハスラムのチーフメカニックを務めます。そして1985年には、フレディ・スペンサーのチームに加わり、アーヴ・カネモトの下で500ccマシンの整備を担当。スペンサーの250ccと500ccのダブルタイトル獲得に貢献し、自身も初めてワールドタイトルを獲得したマシンに携わる経験を得ます。

その後、ワイン・ガードナーのチーフエンジニアに昇格し、1987年のガードナーのタイトル獲得に貢献。1989年からはミック・ドゥーハンと共に5年連続チャンピオン獲得（1994～1998年）という偉業を達成しました。

ドゥーハンの引退後、長年のレース活動による心の疲れから引退を考えましたが、バレンティーノ・ロッシからの熱烈な要請を受け、ロッシのホンダ移籍に伴いチーフエンジニアに就任。ロッシと共に5年連続（2001～2005年）を含む7個の最高峰クラスタイトルを獲得します。

ヤマハ時代と新たな挑戦

2004年、ロッシはバージェスを含むスタッフと共にヤマハに移籍。僅かな準備期間にも関わらず、開幕戦で優勝を飾り、ロッシの異なるメーカーでの2年連続タイトル獲得という偉業に貢献します。

プライベート

1993年、ロスマンズの女性と結婚。現在は家族と共にオーストラリアで暮らしています。レース以外では、アデレード・クロウズを熱心に応援するオージーフットボールファンとしても知られています。

ジェレミー・バージェスは、類まれな技術と経験、そして人徳を兼ね備えた、真のモーターサイクルレース界のレジェンドと言えるでしょう。彼のキャリアは、多くのライダーとチームにとって、永遠に語り継がれる輝かしい歴史として刻まれています。

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