ジェームズ・サムナー

ジェームズ・バチェラー・サムナー：酵素の結晶化に成功した生化学者

ジェームズ・バチェラー・サムナー (1887年11月19日 - 1955年8月12日) は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州カントン出身の化学者であり、1946年のノーベル化学賞受賞者として知られています。彼の業績は、酵素の化学的性質に関する理解を深め、生化学分野に革命をもたらしました。

サムナーの生涯は、若くして経験した困難と、並外れた研究への情熱によって彩られています。17歳の時、狩猟事故で左腕を負傷する不幸に見舞われますが、この経験が彼の研究人生にどう影響したのかは定かではありません。しかし、困難を乗り越えて彼はハーバード大学を卒業後、ハーバード医療学校で生化学を学び、1914年に博士号を取得します。

その後、コーネル大学医学部の助教授に就任したサムナーは、酵素の研究に没頭しました。特に、ウレアーゼの結晶化に挑みます。当時、酵素はタンパク質であるという説が提唱されていましたが、それを証明する明確な証拠はありませんでした。多くの研究者が酵素の結晶化に失敗する中、サムナーは粘り強く研究を続け、ついにウレアーゼの結晶化に成功します。しかし、この画期的な成果はすぐに認められるわけではありませんでした。低分子量の酵素も結晶化できることを示した1926年の研究成果を皮切りに、徐々にその功績が認められ、1929年には教授に昇進します。

1937年には、グッゲンハイム研究奨励金を得てスウェーデンに滞在し、著名な化学者テオドール・スヴェドベリのもとで研究を行いました。同年、ロックフェラー研究所のジョン・ノースロップがペプシン結晶化に成功したことも、酵素研究における大きな進歩でした。サムナーの研究とノースロップの研究は、酵素がタンパク質であるという説を決定的に証明し、生化学の発展に大きく貢献しました。

彼の功績は高く評価され、1946年にはジョン・ノースロップ、ウェンデル・スタンリーと共にノーベル化学賞を受賞します。さらに、1948年には国立科学アカデミーの会員にも選ばれ、その業績は後世にまで大きな影響を与えました。1955年、ニューヨーク州バッファローで逝去しました。

サムナーの私生活にも目を向けると、彼は生涯で3度結婚し、6人の子供に恵まれました。彼の最初の妻バーサ・リケッツは、離婚後、シド・リケッツ・サムナーの名で小説家として成功し、『ピンキー』などの作品が映画化されるなど人気を博しました。しかし、皮肉にも1970年に孫に殺害されるという悲劇的な最期を迎えています。

サムナーの研究は、酵素の性質や機能の理解を深めるだけでなく、生化学研究の方法論に大きな革新をもたらしました。酵素結晶化の成功は、酵素の純粋な状態での研究を可能にし、酵素の化学的性質や作用機序の解明を飛躍的に進展させました。彼の業績は、現代の生化学、分子生物学、医学などの分野の基礎となっています。彼の生涯は、科学における粘り強い探求と、困難を乗り越える人間の強さを示す一つの物語と言えるでしょう。

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