ジョン・ノースロップ

ジョン・ハワード・ノースロップ (1891年7月5日 - 1987年5月27日) は、アメリカ合衆国の生化学者として、1946年のノーベル化学賞受賞者としてその名を歴史に刻んでいます。ニューヨーク州ヨンカーズに生まれ、学術的な環境に恵まれた幼少期を過ごしました。父はコロンビア大学の動物学教授、母はハンターカレッジの植物学教授という、まさに学者の家系に育ったのです。

彼はコロンビア大学で博士号を取得した後、第一次世界大戦中は米陸軍の化学戦部隊に所属。アセトンとエタノールの発酵生産に関する研究に従事しました。この経験が、後に彼の研究人生を決定づける酵素研究への関心を育むことになります。

1919年、ノースロップは消化酵素ペプシンの単離と結晶化に成功。そして、ペプシンがタンパク質であることを証明しました。この発見は、酵素研究における画期的な成果でした。当時、酵素の性質は謎に包まれており、その実体がタンパク質であるという認識は広く浸透していませんでした。ノースロップの研究は、この常識を覆し、酵素研究に新たな地平を開くこととなりました。

その後もノースロップの研究は目覚ましい進歩を続けます。1938年には、世界で初めてバクテリオファージの結晶化に成功。バクテリオファージが核酸とタンパク質の混合物であることを明らかにしました。さらに、トリプシン、ペプシノーゲン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼなどの酵素の結晶化と単離にも成功しています。

酵素の解析には、不純物のない純粋な物質を得ることが不可欠です。また、酵素の構造を解明するには、結晶を作成し、X線回折を用いてその構造を分析する必要があります。ノースロップの研究は、これらの点において大きな貢献を果たしました。彼の精緻な実験手法と粘り強い研究姿勢が、酵素研究の発展に欠かせない基盤を築いたのです。

1916年から1961年まで、ノースロップはロックフェラー研究所に在籍。この研究所は、当時、世界をリードする研究機関の一つとして知られており、多くの著名な科学者が所属していました。ノースロップはその中でも重要な役割を果たし、数々の画期的な研究成果を上げています。1949年には、カリフォルニア大学バークレー校の教授に就任。晩年はアリゾナ州ウィッケンバーグで過ごしました。

ノースロップの研究は、酵素研究のみならず、生化学全般の発展に大きな影響を与えました。酵素の純粋な結晶を得ることで初めて、酵素の化学的性質や構造を正確に調べることが可能となり、現代の分子生物学や生化学の基礎を築いたと言えるでしょう。彼の業績は、現在でも高く評価され、多くの科学者たちによって引き継がれています。

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