ジガバチソウ

ジガバチソウ (Liparis krameri)

ジガバチソウは、ラン科に属する多年草で、主に地面や木の上で育つ植物です。この植物は日本各地で分布し、特に亜寒帯から暖温帯の山地の森の中でよく見かけることができます。ジガバチソウの最も顕著な特徴は、花の形が蜂のジガバチに似ている点で、この名前が付けられました。

特徴

ジガバチソウは、偽球茎と呼ばれる球形の部分をもつことが特徴で、これが緑色で枯れた鱗片に包まれています。この偽球茎は通常、地上に出ている部分が目立ちます。葉は前年の偽球茎の側から2枚が向き合わせて出てきており、広卵形で先端が少し鋭くなっています。葉のサイズは通常3から8センチメートルの長さで、幅は2から4センチメートルです。また、葉の基部は狭くなっており、葉柄としてしっかりとしています。葉の縁は縮れていて、葉脈は明瞭で、特に横に走る二次脈がはっきりと見え、網目模様が美しいのも特徴です。

花

花の時期は5月から7月にかけてで、花茎は直立し、通常8から20センチメートルの高さに成長します。一つの花茎には10から20個の花が付きます。花の色合いは淡い緑色から黒褐色まで様々で、特に淡緑色のものを特別な品種として区別することもあります。花の基部には小さな三角形の苞があり、その長さは1から1.5ミリメートルです。

背萼片や側萼片は線状で尖っており、それぞれ10から12ミリメートルの長さです。側花弁は細長く、反り返りつつ先が尖っていますが、その長さは8から10ミリメートルです。また、萼片と側花弁は緑色に紫褐色の色合いを持っています。唇弁は6から8ミリメートルの長さで、黄緑色に紫褐色の筋が目立ち、先端は急に曲がって下に垂れ、縁は少し反っています。蕊柱は淡緑色で約2ミリメートル、葯帽は黄色です。

生育環境

この植物は日本全国に広く分布し、特に北海道、本州、四国、九州の亜寒帯から暖温帯の山地で多く見られます。また、まれに朽木や岩の上の苔に着生することもあります。国外では主に朝鮮半島にも分布しています。

名前の由来

ジガバチソウという名前は、「似我蜂草」という意味で、花の形が蜂のジガバチに似ていることから名付けられました。また、学名の「krameri」は、ベルギーの園芸家で日本の植物を採集したクラメルにちなんでいます。

下位分類

ジガバチソウにはいくつかの亜種が存在します。例えば、葉の周囲が白色の「フクリンジガバチソウ」や、花が淡緑色で紫色を帯びない「アオジガバチソウ」、伊豆七島に特有の小型変種である「ヒメジガバチソウ」があり、それぞれ独特の特徴を持っています。ヒメジガバチソウは絶滅危惧IB類に分類されています。

参考文献

• - 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本I 単子葉類』
• - 牧野富太郎原著、大橋広好編『新牧野日本植物圖鑑』
• - 中島睦子著『日本ラン科植物図譜』
• - 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』

以上のように、ジガバチソウは独特の美しさと生態を持つ植物であり、自然の中で見ることができる貴重な存在です。

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