ジス・ガールズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー

アレサ・フランクリンの『ジス・ガールズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー』

アメリカの伝説的なシンガー、アレサ・フランクリンが1969年に録音、1970年にリリースしたアルバム『ジス・ガールズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー』は、彼女のキャリアの中でも特に重要な一枚です。このアルバムには、フランクリン独自の色合いを加えた数多くのカヴァー曲が含まれており、オリジナル楽曲だけでなく、他アーティストの名曲も魅力的な表現で届けています。

アルバムの概要

アルバムのタイトル曲「ジス・ガールズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー」は、ハーブ・アルパートの「This Guy's in Love with You」のカヴァーであり、アレサ・フランクリンの圧倒的なボーカル力が光ります。また、アルバムにはビートルズの「レット・イット・ビー」と「エリナー・リグビー」といった名曲のカヴァーも収められており、特に「レット・イット・ビー」はフランクリンのバージョンがビートルズのものよりも先にリリースされたという興味深い背景があります。さらに、ボビー・ブランドのヒット曲「シェア・ユア・ラヴ・ウィズ・ミー」も収録されており、これらの楽曲にフランクリンが与える新たな解釈が感じられます。

音楽的影響と評価

アルバムからの先行シングル「ザ・ウェイト」は、Billboard Hot 100で19位、R&Bシングル・チャートで3位にチャートインし、多くのリスナーに受け入れられました。他にも、「シェア・ユア・ラヴ・ウィズ・ミー」はHot 100で13位、R&Bチャートで1位を記録し、「エリナー・リグビー」はHot 100で17位、R&Bチャートでは5位に達しました。本作自体もBillboard 200で17位、R&Bアルバム・チャートでは2位にランクインし、商業的な成功を収めました。

アルバムの中の「コール・ミー」は、再びHot 100で13位、R&Bチャートで1位を獲得し、フランクリンの力強い歌声が改めて評価される結果となりました。第12回グラミー賞ではこのアルバムから「シェア・ユア・ラヴ・ウィズ・ミー」が最優秀女性R&Bボーカル・パフォーマンス賞を受賞し、アレサ・フランクリンの才能を世に知らしめました。

アルバム収録曲の多様性

アルバムは多様なスタイルで構成されており、各トラックごとに異なる感情やメッセージを伝えています。収録曲には、ジョン・ハーリーとロニー・ウィルキンス作の「サン・オブ・ア・プリチャー・マン」や、チップス・モーマンとダン・ペン作の「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」などが含まれています。また、各トラックにはアレサ・フランクリンの実力派のバックミュージシャンによる演奏も加わり、アルバム全体の完成度をさらに引き上げています。

音楽的アプローチとアーティストの成長

Richie Unterbergerはオールミュージックにおいて、本作について「アレサ・フランクリンがポップ色を強めたアルバム」と評しつつも、全体的には「実に土臭い作品である」と評価しています。また、音楽評論家のロバート・クリストガウは「彼女は単なるポップスのカヴァーよりも、ロック的なメッセージの楽曲により相応しい」と指摘しており、アルバムが持つ音楽的深みを際立たせています。

アレサ・フランクリンの『ジス・ガールズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー』は、彼女のボーカルの素晴らしさと広い音楽的レンジを示す重要な作品であり、その後の音楽シーンに多大な影響を与えることとなりました。

このアルバムを聴くことで、フランクリンの魅力を再発見し、彼女がなぜ“ソウルの女王”と称されるのかを理解することができるでしょう。

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