ジス・タイム (アル・ジャロウのアルバム)

アル・ジャロウの『ジス・タイム』

『ジス・タイム』(This Time) は、1980年にワーナー・ブラザース・レコードから発売されたアル・ジャロウの4枚目のスタジオアルバムであり、彼の音楽キャリアにおいて重要な転換点を訪れました。このアルバムでは、ジャロウの音楽スタイルがよりR&Bにシフトしていく様子が伺えます。この変化は、彼の音楽に新しい色を加え、近代的なサウンドを取り入れることで、ジャズからメインストリーム音楽への道を拓きました。

アルバムはリリースと同時にジャズチャートで1位を獲得し、その影響力はジャズファンの枠を超えて広がりました。また、R&Bチャートでは最高6位、さらにBillboard 200でも27位にランクインするという大きな成功を収めました。このような成果を収めた背景には、ジャロウ自身の独自の歌声だけでなく、巧みなプロデューサーやミュージシャンたちの協力もあったと言えるでしょう。

特に、アルバムに収録されている楽曲の中から「ネバー・ギヴィン・アップ (Never Givin' Up)」は、1981年の第23回グラミー賞において最優秀男性R&Bボーカル・パフォーマンス賞にノミネートされています。これはジャロウにとって、R&Bジャンルでの初めてのノミネートとなり、彼のキャリアにおいて画期的な出来事でした。

『ジス・タイム』は、ジャロウにとってアルバム・チャート Billboard 200 のトップ40に初めて入るきっかけとなった作品です。また、R&Bチャートでのトップ10入りや、ジャズチャートでの1位もこのアルバムが初めて達成した結果です。これにより、ジャロウは新しい音楽の潮流を捉え、その後の作品ではさらに多くの成功を収めることになります。

トラックリスト

アルバムには以下のトラックが収録されています。日本語の曲名は2014年のリイシューCDを基にしています。

1. ネバー・ギヴィン・アップ "Never Givin' Up" (3:56)
2. 愛のシンフォニー "Gimme What You Got" (3:43)
3. ラブ・イズ・リアル "Love Is Real" (4:23)
4. 海の男アロンゾ "Alonzo" (5:25)
5. チェンジ・ユア・マインド "(If I Could Only) Change Your Mind" (4:16)
6. スペイン "Spain (I Can Recall)" (6:31)
7. 悲しみの中に "Distracted" (5:51)
8. ユア・スイート・ラヴ "Your Sweet Love" (4:13)
9. ジス・タイム "(A Rhyme) This Time" (3:42)

チャートと受賞

「ネバー・ギヴィン・アップ」はR&Bチャートで最高26位、「悲しみの中に」は61位、「愛のシンフォニー」は63位にランクインしました。特に「ネバー・ギヴィン・アップ」はグラミー賞にノミネートされたことがあり、当時の音楽界においても注目された楽曲でした。この年のグラミー賞では、ジョージ・ベンソンの『ギヴ・ミー・ザ・ナイト (Give Me the Night)』が受賞しましたが、ジャロウの楽曲が評価されたことは、R&Bアーティストとしての彼の存在感を示すものでもありました。

パーソネル

アルバムの制作には多くの優秀なミュージシャンが携わりました。以下は主なメンバーです。

- アル・ジャロウ – リードボーカル、バッキングボーカル、ボーカル・パーカッションなど
- グレッグ・マシーソン – アコースティック・ピアノ、リズム・アレンジ
- トム・カニング – フェンダー・ローズ、アコースティック・ピアノ
- デイヴィッド・フォスター – アコースティック・ピアノ
- スティーヴ・ガッド – ドラムス
- ジェイ・グレイドン – エレクトリック・ギター、リズム・アレンジ

制作スタッフ

このアルバムのプロデューサーはジェイ・グレイドンで、録音はサンフランシスコのドーンブレイカー・スタジオで行われました。マスタリングはロサンゼルスのA&Mマスタリング・スタジオで行い、アートディレクションはリチャード・セイリーによって手掛けられました。

このように、『ジス・タイム』はアル・ジャロウの音楽の転機を示すだけでなく、彼のキャリアの中で重要な地位を持つアルバムであり、彼の影響力を広げた作品として多くの音楽ファンに愛され続けています。

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