ジメチルスルホキシド

ジメチルスルホキシド（DMSO）：特性、用途、安全性、そして生産

ジメチルスルホキシド（Dimethyl sulfoxide、DMSO）は、無色無臭の有機化合物で、優れた溶媒として知られています。高純度のDMSOは無臭ですが、保存期間が長くなると、硫黄化合物の分解臭（磯のような香り）を帯びることがあります。また、非常に吸湿性が高いことも特徴です。その分子式はC₂H₆SOです。

驚異的な皮膚浸透性と多様な用途

DMSOの最も注目すべき特性は、その高い皮膚浸透性です。このため、薬物やその他の物質の皮膚への浸透を促進する作用があります。そのため、DMSO自身は低毒性ですが、他の物質と混合された場合、それらの物質の皮膚浸透を高める可能性があり、取り扱いには注意が必要です。

その優れた溶解性から、DMSOは実験室から工業規模まで幅広く溶媒として利用されています。水と自由に混和し、多くの有機化合物や無機塩を溶解できる非プロトン性極性溶媒であるため、多様な物質を溶解・処理する用途に適しています。

さらに、有機合成化学においては酸化剤としても活躍します。例えば、スワーン酸化など、様々な有機合成反応において重要な役割を果たしています。医療分野では、膀胱炎治療薬「RIMSO-50」（DMSO 50%水溶液）として米国やカナダなどで使用されており、競走馬の治療にも用いられる国もあります。

NMR測定においては、重ジメチルスルホキシド（DMSO-d6）が重溶媒として利用されます。これは、DMSOの水素原子を重水素原子に置換したもので、水酸基の水素原子のイオン交換を抑制し、水酸基と隣接基の水素原子間のカップリングパターンを観測することを可能にします。

安全性に関する情報

DMSOは引火点87℃の可燃性液体であり、皮膚や眼への温和な刺激性を示します。前述の通り、皮膚への浸透性が高いことから、取り扱いには注意が必要です。日本では消防法で危険物第4類（第3石油類・水溶性）に指定されています。

潤滑油などの石油由来製品においては、英国石油協会規格のIP346法でDMSO抽出物量が3wt％未満であれば発がん性の懸念は低いとされています。しかしながら、取り扱いにおいては適切な安全対策を講じる必要があります。

DMSOの生産方法

DMSOは、ジメチルスルフィドを酸素や窒素[[酸化物]]で酸化する化学プロセスによって生産されます。

まとめ

DMSOは、その優れた溶媒特性、高い皮膚浸透性、そして多様な用途から、化学、医療、工業など幅広い分野で重要な役割を果たしています。一方で、可燃性や皮膚刺激性、他の物質との混合による皮膚浸透促進作用など、安全性に関する情報にも注意を払う必要があります。DMSOの特性と用途、そして安全性に関する情報を正しく理解し、適切に取り扱うことが重要です。

関連文献

佐藤武雄「ジメチルスルホキシドの有機反応における溶媒および試薬としての応用(その1)」『有機合成化学協会誌』第23巻第9号、有機合成化学協会、1965年、768-777頁
佐藤武雄「ジメチルスルホキシドの有機反応における溶媒および試薬としての応用(その2)」『有機合成化学協会誌』第23巻第10号、有機合成化学協会、1965年、867-875頁
* 宇田尚「ジメチルスルホキシドとその関連化合物の化学 - 溶媒, 助剤, 試薬としての有機合成への応用」『有機合成化学協会誌』第27巻第10号、有機合成化学協会、1969年、909-938頁

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