引火点

引火点とは

引火点（いんかてん、英: flash point）とは、ある物質が蒸発し、空気と混合して可燃性の混合物を形成する際の最低温度を指します。この温度以上になると、可燃性液体または固体が点火し燃焼を開始することが可能となります。

引火とそのメカニズム

引火とは、可燃性の物質を加熱することで小さな火花や炎で燃焼し始める現象です。特に液体においては、その蒸気が一定の濃度に達したときに引火が起こります。引火点は、可燃性液体の火のつきやすさを示す重要な指標となっており、国際的な規格や日本の法律にも基づく重要な特性とされています。日本産業規格（JIS K2265-1の3.1項）では、引火点を試料蒸気に火を近づけたときに瞬時に炎が発生し、その炎が液体表面上を広がる最低の温度として定義しています。

測定条件と関連性

引火点は通常、空気中の標準気圧において測定され、その値は周囲の気圧によって変動する傾向があります。気圧が下がると引火点も低くなり、逆に気圧が高ければ引火点も上昇します。ただし、引火点の状態では可燃性液体の蒸気濃度が最小限であり、持続的な燃焼には至りません。この状態からさらに加熱した際、液体が連続的に5秒以上燃焼する条件を満たす温度を燃焼点と呼び、これは必ず引火点よりも高くなります。可燃性液体の燃焼は、蒸気と空気の最適な混合によって引き起こされ、濃度が低すぎるまたは高すぎると燃焼しません。この最小濃度と最大濃度の間にある範囲を燃焼範囲と呼びます。

危険性評価と測定方法

引火点の測定法は大きく分けて密閉式と開放式があります。密閉式試験では、試料に蓋をして、その間から点火源を出し入れし測定します。具体的な試験方法にはタグ密閉法、迅速平衡密閉法、ペンスキー・マルテンス密閉法などがあり、それぞれ異なる特性を持つ物質に用いられています。例えば、タグ密閉法は引火点の低い石油製品に使われ、迅速平衡密閉法は広範囲の油や溶剤に対応可能です。

引火性と発火性

引火点は、物質の引火性に関する指標であり、発火点（発火温度）は着火性に関わるものです。引火点が華氏100度（摂氏37.8度）以下の液体は引火性とされ、それ以上は可燃性として分類されます。日本の消防法でも、引火点に応じて危険物が分類され、対象物の取り扱いに関して規制があります。

内燃機関との関連

内燃機関においては、ガソリンエンジンが典型的な例です。このエンジンでは、ガソリンの蒸気と空気が混合され、圧縮されることで引火点を超える温度が達成され、その後点火プラグから火花が放たれ燃焼します。ここでは「低い引火点」と「高い発火点」が求められます。対して、ディーゼルエンジンは圧縮によって温度が上がり燃料が発火するため、こちらは「高い引火点」と「低い発火点」という特性が必要とされます。

引火点は、可燃性物質を扱う上での安全性を確保し、適切な管理を行うために不可欠な情報です。特に産業界では、多様な物質の引火点を把握しておくことで、適切な対策を講じることが求められます。

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