ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日

ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日

本作は、漫画家・横山光輝が生んだ不朽の名作『ジャイアントロボ』を、脚本に今川泰宏、漫画に戸田泰成を迎え、新たな解釈で描いた日本の漫画作品です。秋田書店の月刊漫画雑誌『チャンピオンRED』にて、2006年11月号から2011年4月号まで連載されました。単行本第1巻には、先行掲載された読み切り版がプロローグとして収録されています。連載終了後、同誌では続編となる『ジャイアントロボ バベルの籠城』がスタートしました。

OVA作品『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』とは、基本的な設定や登場キャラクターは共通している部分が多いものの、ストーリーや詳細な設定は大きく異なっています。原作者である横山光輝の多岐にわたる作品から様々なキャラクターが「スター・システム」的に登場しており、これらの関連作品やOVA版を知っている読者は、作品中に散りばめられた意図やモチーフをより深く読み解き、特別な楽しみ方ができます。

物語の概要

物語は、「草間博士の乱」と呼ばれ、かつて世界が滅亡の危機に瀕した出来事から10年後を舞台に展開されます。主人公・草間大作は、幼少期に父である草間博士から、秘密結社BF団が進める「GR計画」の中核である巨大ロボット、ジャイアントロボ（GR・1）の操縦権を託されました。成長した大作は、BF団と国際警察連合という二大組織の間で繰り広げられる、ジャイアントロボを巡る熾烈な争いに巻き込まれていきます。

誕生編

物語は衝撃的に幕を開けます。地球を壊滅させかねないジャイアントロボの力に危機感を抱くBF団と国際警察連合は、その操縦者である大作の抹殺を図ります。ジャイアントロボを駆って敵を退ける大作でしたが、一度戦闘状態に入ったジャイアントロボは攻撃を止められず、ついには世界全体を敵と認識し暴走します。そこに現れた父・草間博士は、ロボを停止させるには、大作が操縦権放棄のキーワードを言うしかないと告げますが、大作はその言葉を忘れてしまっていました。しかし、この一連の出来事は、十傑衆の一人、幻惑のセルバンテスによる特殊能力「舞台演劇」を用いた、10年にわたる壮大な幻術であることが後に判明します。

白昼の残月編

死亡したと思われていた元九大天王の林冲が、謎の牢獄から脱出してくるエピソードです。

カナーリの牢獄編

父・草間博士を失った後、破損したジャイアントロボを修理できる唯一の人物、ドラグネット博士を求めて、大作は林冲、九紋竜史進と共に「カナーリの牢獄」へと向かいます。この牢獄はBF団が作り出した、常に地上のどこかを彷徨う空間であり、魔法使いサリーの力によって維持されていることが明かされます。

激闘!梁山泊編

国際警察連合の創始者・晁蓋の遺言に基づき、韓信元帥は新たな梁山泊の頭領を決めるため、強者を集める大会を開催します。副賞は「草間博士の遺言」という重要な情報でした。九大天王の影丸、ディック牧、天童らが敗退するなど波乱の展開となる中、村雨一家の赤影もこの戦いに参戦します。

主な勢力と登場人物

村雨一家
国際警察連合の手段を選ばないやり方に反発し、独自の判断でBF団と戦う組織。国際警察連合からの離反者が多いのが特徴です。原案は『鉄人28号』の村雨一家。草間大作は物語の中でこの組織と深く関わります。

草間 大作（くさま だいさく）
本作の主人公。ジャイアントロボの操縦者。父の過去の行動に悩み、その罪を償おうと行動しますが、それが原因で危うい状況に陥ることもあります。
お銀ちゃん（おぎんちゃん）
本作序盤の主要ヒロイン。『静止する日』の銀鈴に相当するポジションで、伸縮自在の十手を操ります。村雨一家と行動を共にし、林冲に恋心を寄せています。
村雨 竜作（むらさめ りゅうさく）
村雨一家を率いる一番頭。元国際警察連合の凄腕ですが、独特の風貌と奇抜な言動で強い個性を放ちます。敵の傷口から唐獅子を出すといった異能を持ちます。
村雨 健次（むらさめ けんじ）
OVA版同様、不死身とも思える再生能力を持つ寡黙な男。

BF団
世界征服を目論む巨大秘密結社。「草間博士の乱」で大打撃を受けましたが、草間博士がもたらした「GR計画」によって再起を図ります。

ビッグファイア
BF団の首領。
策士・孔明（さくし・こうめい）
BF団の作戦参謀。「GR計画」をセルバンテスに委ねるなど、独自性の高い戦略を立てますが、他の幹部からは反感を抱かれています。
十傑衆（じっけつしゅう）
BF団の最高幹部たち。
幻惑のセルバンテス：幻術「舞台演劇」と多重世界移動の能力を持つ。草間親子とは親交があり、大作からは慕われていました。
衝撃のアルベルト：衝撃波を操る。セルバンテスとは盟友であり、娘のサリーを深く愛しています。国際警察連合の大塚署長とは敵ながら不思議な関係にあります。
白昼の残月：隻腕・盲目の謎めいた新参者。包帯に隠された素顔や林冲との因縁など、多くの謎を秘めています。

国際警察連合
BF団の野望阻止を目指す組織。梁山泊を拠点とし、目的のためには非情な手段も辞さない側面があります。

九大天王（きゅうだいてんおう）
国際警察連合の最高戦力。
韓信元帥（かんしんげんすい）：九大天王のリーダー格。常に腹黒い笑みを浮かべ、「甘言」という暗示能力で相手を操ります。人間形態ですが本体は馬であるという異形。
静かなる中条（しずかなるちゅうじょう）：韓信と共に大作に執拗に迫る人物。『静止する日』から最も設定が変更されたキャラクターの一人であり、物語途中で豹変し真の力を発揮します。残月誕生に深く関わっています。
無明幻妖斉（むみょうげんようさい）：梁山泊の守護を担う呪術使い。草間博士とは過去に対立がありました。
豹子頭林冲（ひょうしとうりんちゅう）：元九大天王。人格・実力共に優れ、次期頭目と目されていましたが、十傑衆の罠にかかり消息不明となります（後にカナーリの牢獄に囚われていたことが判明）。実直な性格で、残月とは因縁があります。
九紋竜史進（くもんりゅうししん）：林冲に代わって九大天王に加わった青年。精神的な弱さを克服し、大作を助けるために活躍します。

その他

草間博士（くさまはかせ）：大作の父。「草間博士の乱」を引き起こした人物。GR計画をもたらし、大作にロボの操縦権を託しました。
幻夜（げんや）：中立的な立場で、テレポート能力を持つ謎の人物。
ドラグネット博士：カナーリの牢獄の主。機械の自己修復機能を研究する天才科学者で、草間博士とは親友でした。超人間ケリーを使役します。

登場メカニック

ジャイアントロボ（GR・1）：GR計画の核であり、大作の操縦する巨大ロボット。世界を滅ぼしかけた「アンチエネルギー・システム」を搭載しています。外形は原作版に近いデザイン。
GR・2 & GR・3：GR・1の兄弟機。本来はBF団の所有ですが、物語の過程で村雨一家（後に国際警察連合）の戦力となります。本作では兄弟機が初めて協力して戦う描写がなされました。
ブラックオックス：不乱拳博士が操る3体の人型ロボット。
V号（マレーネ・ディートリッヒ、マリア・カラス、グレタ・ガルボなど）：国際警察連合が所有する爆撃機。モチーフは『バビル2世』のロプロス。
金目像：幻妖斉が呪術で生み出す岩の像。モチーフは『仮面の忍者 赤影』。
ガイアー：物語冒頭に登場する、GR・1と対峙する謎のロボット。
BF団巨大ロボット：スフィンクス、ウラヌス、ウラエヌスなど、『マーズ』の六神体をモチーフとした巨大ロボットが登場します。

キーワード

草間博士の乱：10年前に草間博士が引き起こし、世界中に壊滅的な被害をもたらした事件。
GR計画：草間博士がBF団にもたらした計画。ジャイアントロボの建造が中心。
バリヤー（バリアー）：多くの登場人物やロボットが使用する防御能力。
アンチエネルギー・システム：ジャイアントロボに搭載された最強の武装。光弾を発射し、周囲のエネルギーを吸収・爆発させる広範囲攻撃。
* カナーリの牢獄：林冲や魔法使いサリーが囚われていた、漂流する謎の空間。

本作は、横山光輝の広大な作品世界を再構築し、緻密な伏線と人間ドラマ、そして巨大ロボットと超人たちの激しいバトルを描き出した、読み応えのある作品となっています。

もう一度検索