ジャイナ教

ジャイナ教（ジャイナきょう）

ジャイナ教は、マハーヴィーラを祖とし、インドに根ざした宗教で、その特長は「アヒンサー」すなわち不害の教えにあります。この教えは、他者に危害を加えないことを重視し、身体的行為だけでなく、言葉や心の中の思いにも及びます。仏教とは異なり、インド以外で広く普及することはありませんでしたが、約2500年間にわたりインド文化に深い影響を与えてきました。2019年時点で、世界中に約500万人の信徒がいるとされています。

起源と教祖

ジャイナ教の創始者であるマハーヴィーラ（本名：ヴァルダマーナ）は、前6世紀から前5世紀にかけて活躍しました。彼は王族出身で、30歳で出家し、12年間の厳しい苦行を経て真理を悟りました。以後、彼は教えを広めるために遊行し、72歳で生涯を終えました。ジャイナ教では、彼は24人のティールタンカラの最後の存在として崇拝されています。

教義の特徴

ジャイナ教は相対主義を重視し、真理を一つに定義することを避けます。ヴァルダマーナの教えにある「スヤード論」では、さまざまな視点から物事を捉え、相対的に考察することが求められます。このようにして、ジャイナ教徒は他の宗教的思想との共存を図りつつ、自己の信念を貫こうとします。

また、ジャイナ教の核心には「三つの宝」と呼ばれる教えがあります。この三宝は、正しい信仰、正しい知識、正しい行いを指し、特に正しい行いが重要視されています。これは、出家者向けの五つの大禁戒（マハーヴラタ）として具体化され、生き物を傷つけないアヒンサー、虚偽の言葉を発しないこと、盗みを働かないこと、性的行為を行わないこと、何も所有しない無所有を含みます。

生き方と食生活

ジャイナ教徒は、肉、魚、卵を含む動物性食品を摂取せず、食事は主に豆類や野菜を中心としたものになります。また、調理においても火を使わない選択をすることがあります。これは、いかにして生き物を傷つけずに生活するかを常に考慮した結果です。

宗派と派閥

ジャイナ教の信徒は、白衣派と裸行派の二つの主要な派閥に分かれています。白衣派は僧侶が着衣することを認め、比較的進歩的な立場をとります。一方、裸行派は無所有の理念を重視し、裸行を厳格に守ります。この分裂は1世紀頃に始まり、各派閥はその後も独自の道を歩みつつ、教団の拡大を続けてきました。

現在の状況

現在、ジャイナ教徒は主にインドのグジャラート州、ラージャスターン州、南インド等に分布しています。信徒たちは強固な結束を持ち、伝統的な商業活動に従事することが多く、特にジャイナ商人はインドの経済において重要な役割を果たしています。信徒の中には慈善活動に積極的な人々も多く、その清らかな印象が評価されています。

聖典と文学

ジャイナ教の聖典は、白衣派が保持するシッダーンタやアーガマ、裸行派が持つ独自の文献に分かれています。歴史的な文献は散逸したとされ、教理については各派独自に発展を遂げてきました。文学も幅広く、古代から現代にかけて、多くの言語で表現された作品が存在しています。

このように、ジャイナ教はその思想体系と実践を通じて、現代においても持続的な影響を与え、インド社会の一部として存在し続けています。

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