ジャイロコンパス

ジャイロコンパスの概要

ジャイロコンパスは、高速に回転するコマの運動を応用して方位を示すナビゲーション機器です。この装置は「転輪羅針儀」とも呼ばれ、特に500トン以上の船舶には設置が法律で義務付けられています。最近では、航空機の飛行方位計のようにジャイロスコープの特性を利用したものにも「ジャイロコンパス」という用語が用いられることがありますが、本来は方位を自己修正する機能を持たないものは含まれません。

構造と原理

ジャイロコンパスの核心は、高速回転するジャイロスコープにあります。ジャイロスコープは、その回転軸の方向を維持しようとする特性を持っており、地球が自転しているために、この特性を活かして真北を向くことができます。この現象は「プリセッション」と呼ばれ、ジャイロコンパスが北を向く仕組みの基本です。

起動時には方位磁石などで北を確認し、ジャイロ軸をその方向に調整してから回転を開始します。すると、周囲の振動による減衰を経て最終的に真北に静止します。今では、その過程が数時間から数十秒に短縮され、技術の進歩が見られます。

長所と短所

ジャイロコンパスの大きな利点は、方位磁石とは異なり、地球の自転軸に対する真北を常に示すことができる点です。そのため、北磁と真北との間の補正が不要です。また、磁場の影響を受けないため、金属製の航空機や船舶内でも問題なく使用できます。さらに、外部の動揺から独立して方位を示し、他の機器に情報を提供できる点も優れています。

しかし、短所も存在します。特に、地球の運動以外の力が作用した場合、正しい方位が乱れる「ジャイロエラー」が起こることがあり、これは加速度を感知する慣性航法装置によって補正されます。また、動力源がないと機能しないため、緊急時には他のナビゲーション手段を用意する必要もあります。さらには、静定に時間がかかる上、大型で高価であるため、メンテナンスも求められます。

歴史

ジャイロコンパスの原型は、1885年にMarinus Gerardus van denBosによって特許が取得されたことに始まりますが、実用化されたのは1906年にドイツの技術者ヘルマン・アンシュッツ・ケンプフェによるもので、当時ドイツ帝国海軍で広く採用されました。彼はAnschütz＆Co.という会社を設立し、ジャイロコンパスの大量生産を実現しました。

アメリカでは、エルマー・アンブローズ・スペリーが同様の機器を生産し、第一次世界大戦で大きな役割を果たしました。さらに、イギリスではブラウンによって船舶や航空機用のジャイロコンパスが開発されました。

また、1923年にマックス・シューラーは、ジャイロコンパスの誤差を抑える技術として84.4分の振動周期を持たせる方法を発見しました。このシューラー周期を利用した調整方法は「シューラーチューニング」として知られ、ジャイロコンパスの精度を高める要因となっています。

まとめ

ジャイロコンパスは、信頼性の高いナビゲーション装置として、陸上だけでなく航空や海上交通においても重要な役割を果たしています。技術の進歩によって、その機能はさらに向上しており、今後の発展が期待されます。

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