ジャガー・マークIV

ジャガー・マークIV：戦火を乗り越えた英国車の系譜

ジャガー・マークIVは、SSカーズ社（後にジャガー社と改名）が1935年から1948年まで製造した4ドアサルーンです。第二次世界大戦という激動の時代を背景に、その生産は幾度となく中断、変更を余儀なくされました。本稿では、マークIVとその系譜をたどりながら、その歴史と技術的な特徴を詳細に見ていきます。

誕生と戦時下の苦難：

1935年、SSカーズ社はロンドンモーターショーでマークIVの2.5Lモデル（2½サルーン）を発表しました。同車は、スタンダード社製の直列6気筒2664ccエンジンを搭載。102馬力を発揮し、最高速度は138km/hに達する、当時としては高性能なモデルでした。一方、1.5Lモデル（1½サルーン）も同時に発表され、こちらはスタンダード社製の4気筒1608ccエンジンを搭載し、より手頃な価格帯で提供されました。

SSカーズ社は1939年、過去最高の生産実績を記録するなど順調な滑り出しを見せました。しかし、同年9月の第二次世界大戦勃発により、状況は一変します。戦争により、資源や生産設備の確保が困難になり、マークIVの生産は在庫パーツの利用へと移行。1940年夏には、軍需産業への転換を余儀なくされ、生産は一時的に中止されました。

戦後の復活とモデル展開：

戦後、SSカーズ社はブランド名を「ジャガー」に変更。ピクニックテーブルを廃止し、2½サルーンと3½サルーンを再発売しました。2½サルーンは、戦前のモデルをベースに改良が加えられ、継続生産されました。1½サルーンは戦後のエンジン供給が困難だったため、再発売されませんでした。

3½サルーンは、1938年に登場した上位モデルで、3485ccの直列6気筒OHVエンジンを搭載。125馬力を発揮し、豪華な装備を備えていました。現在、日本においては法政大学体育会自動車部が1947年式3½サルーンを保存しており、六大学野球優勝パレードの先導車として活躍しています。これは、ジャガー・マークIVの歴史が、単なる自動車の歴史にとどまらず、日本の大学の歴史の一部として刻まれていることを示しています。

各モデルの詳細：

2½サルーン (2.5L):

エンジン: 直列6気筒 2664cc OHV、102hp/4600rpm
最高速度: 138km/h
トランスミッション: 4速MT
シャシ: スタンダード製
ボディ寸法: ホイールベース3020mm、全長4520mm、全幅1700mm、全高1470mm
車両重量: 1537kg

1½サルーン (1.5L):

エンジン: 直列4気筒 1608cc (初期型)、1776cc OHV (1939年以降)
最高速度: 112km/h (初期型)
戦後再生産無し

3½サルーン (3.5L):

エンジン: 直列6気筒 3485cc OHV、125hp/4250rpm or 4500rpm
ボディ寸法: ホイールベース3020mm、全長4520mm、全幅1700mm、全高1470mm
車両重量: 1537kg
* トランスミッション: 4速MT

まとめ：

ジャガー・マークIVは、戦時下の困難を乗り越え、戦後も進化を続けた歴史を持つモデルです。その技術的な革新性と、現在まで続くブランドとしてのアイデンティティは、自動車史に重要な足跡を残しました。そして、法政大学体育会自動車部が保存する1947年式3½サルーンは、その歴史を未来へと繋ぐ貴重な遺産となっています。

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