SSカーズ

SSカーズは、イギリスを代表する自動車メーカー、ジャガーの前身として知られています。その歴史は、1928年にブラックプールで創業したスワロー・サイドカー・カンパニーに遡ります。同社はスタイリッシュなサイドカーの製造で成功を収め、その後、コヴェントリーに移転し、4輪車の製造へと事業を拡大しました。当初は他社製のシャーシにボディを架装するコーチビルダーとして活動していましたが、1932年には自社初の自動車を生産開始。これがSSカーズの前身となります。

SSカーズ初期のモデルであるSS1とSS2は、スタンダード製のエンジンとシャーシを採用した実用的な車でした。しかし、経営者であるウィリアム・ライオンズがデザインを主導し、流麗で美しいボディを纏うことで、高級車のような風格と手頃な価格を両立することに成功しました。この戦略は見かけ倒しとの批判もありましたが、大恐慌下の不況の中でも高い人気を獲得し、会社の存続に大きく貢献しました。

SSカーズは、見かけだけのメーカーという評価を覆すべく、本格的なスポーツカー開発に乗り出します。ウィリアム・ヘインズとハリー・ウェスレイクの技術力により、スタンダード製のエンジンを改良。性能を大幅に向上させ、スポーツカーとして十分なエンジンを作り上げました。

1935年にはSS90が発表されました。最高速度90mphから命名されたこのモデルは、23台という少量生産でしたが、後のジャガーの成功の礎を築く重要なモデルとなりました。そして1936年、ついにジャガーブランドを冠したSS100が登場。優れたデザインと強力なエンジンを搭載し、最高速度100mph、0-60mph加速11秒という当時の水準では驚異的な高性能を実現しました。価格も同クラスの他社製品よりも安価に設定され、競合他社にとって大きな脅威となりました。

しかし、SSカーズの主力製品はサルーンであり、1938年にはジャガー・マークIVが発売されています。第二次世界大戦の勃発により1940年には自動車生産は中止されましたが、終戦後、ナチス親衛隊を連想させる「SS」という名称を変更する必要性から、社名をSSカーズからジャガーへ改称しました。同時にブランド名もSSジャガーからジャガーへと変更されました。戦後、ジャガーはマークIVの生産を再開し、サイドカーの製造もスワローブランドで継続。スポーツカータイプの「スワロー・ドレッティ」も販売するなど、多様な製品を展開しました。

こうして、サイドカーメーカーから出発したSSカーズは、ウィリアム・ライオンズのデザインセンスと技術陣の努力により、スタイリッシュで高性能なスポーツカーメーカーへと成長を遂げ、後のジャガーブランドの礎を築き上げたのです。その歴史は、自動車史において重要な一章を飾るものです。

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