ジャガー・Dタイプ

ジャガーDタイプ：伝説のスポーツカー

ジャガーDタイプは、1954年から1957年にかけて製造された、イギリスを代表するスポーツカーです。その名は、ジャガーの傑作スポーツカー、Cタイプの後継モデルとして、そしてル・マン24時間レースでの勝利を収めた栄光の歴史から、自動車史に名を刻んでいます。

Cタイプから受け継いだ進化

ル・マン24時間レースで1951年と1953年に優勝を飾ったCタイプをベースに、Dタイプは開発されました。基本的なメカニズムはCタイプを踏襲しつつも、戦闘力は大幅に向上。洗練されたデザインと高度な技術が融合した、まさに究極のスポーツカーと言えるでしょう。

ロングノーズとショートノーズ：異なる個性の2タイプ

Dタイプの最大の特徴は、その外観にあります。通称「ロングノーズ」と呼ばれるモデルと「ショートノーズ」と呼ばれるモデルが存在し、それぞれ異なる魅力を持っています。いずれも、マルコム・セイヤーズによる風洞実験を基に設計された流麗なボディラインが特徴です。特に、運転席後方に配置されたフィンは、ル・マン24時間レースの長時間走行における直進安定性の向上に貢献したと言われています。

強力なエンジンと軽量ボディ

搭載されたエンジンは、3.4リッター直列6気筒DOHC。Cタイプよりも大幅にチューニングが施され、初期モデルでは250馬力を発揮しました。1955年にはエンジンヘッドと給排気マニフォールドの改良により、270馬力までパワーアップを果たしています。さらに、ドライサンプ方式を採用することで重心を低く抑え、優れたハンドリングを実現しました。

ボディはオールアルミ製、中心部はモノコック構造です。当時の最新技術を駆使して作られた軽量なボディは、Cタイプとほぼ同じ1016kgに抑えられており、優れた運動性能に大きく貢献しました。

先進技術の採用

Dタイプは、数々の先進技術を採用したことで知られています。ダンロップ製のアルミ合金ホイールと4輪ディスクブレーキの採用は、当時の自動車業界において画期的でした。特に4輪ディスクブレーキは、Dタイプが世界で初めて搭載した車種です。トランスミッションは4速マニュアル。

ル・マンでの活躍と悲劇

1954年のデビューイヤー、ル・マン24時間レースに参戦したDタイプは、トラブルによりリタイアを喫しました。しかし、ユーノディエールストレートでの最高速記録は、その潜在能力の高さを示すものとなりました。1955年にはボディの改良、エンジン出力の向上により、ル・マンで優勝。その後1956年、1957年とル・マン3連覇を達成するなど、その実力を証明しました。しかし、1957年、コヴェントリー工場の火災により、生産中のDタイプや関連車両、治具が焼失。この事故により、Dタイプの生産は終了しました。

生産台数と価格

Dタイプの総生産台数はわずか68台。当時の価格は3878ポンドと、Cタイプよりも高価でした。その希少性と圧倒的な性能から、現在ではコレクターアイテムとして非常に高い価値を持つ名車となっています。

ロードゴーイングモデル：XKSS

Dタイプをベースにしたロードゴーイングモデルとして、XKSSも存在します。こちらは、Dタイプと同様に高い性能と洗練されたデザインが評価されましたが、生産台数は少なく、現在でも大変希少なモデルとなっています。

まとめ

ジャガーDタイプは、その卓越した性能、美しいデザイン、そしてル・マン24時間レースでの輝かしい戦績から、自動車史に燦然と輝く存在です。限られた台数しか生産されなかった希少性も相まって、現在ではコレクター垂涎の名車として高い評価を受け続けています。その歴史と魅力は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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