ジャガー・Sタイプ (初代)

ジャガーSタイプは、英国ジャガーが1963年から1968年にかけて製造した高級スポーツサルーンです。世界的な成功を収めたMK2の後継モデルとして誕生しました。

Sタイプ最大の特徴は、後輪サスペンションに独立懸架を採用したことでしょう。この技術は、ジャガーでは1961年発表のマークXとEタイプに次ぐものでした。それまでのMK2は固定軸サスペンションという古い設計だったため、近代化を図る目的でSタイプは開発されました。

サスペンションの改良と同時に、Sタイプではボディデザインも変更されました。MK2では犠牲になっていたトランクスペースが拡大され、テール部分が延長されました。また、フロント部分にはヘッドライトに庇が追加されるなど、デザイン上の刷新が図られています。

搭載エンジンは、MK2や他のジャガー車と同様の6気筒XKエンジンで、排気量は3,400ccと3,800ccの2種類が用意されました。2,400ccエンジンは設定されませんでした。3.4Sの最高速度は185km/h、3.8Sは201km/hに達し、どちらも0-60マイル加速は10.3秒を記録しました。XK150やEタイプのような3キャブレターエンジンは、エンジンベイのスペースが狭いため搭載できませんでした。

さらに、パワーステアリングのギア比も改良され、操縦性が向上しました。ステアリングのロックトゥロックはMK2の4.3回転から3.5回転となり、より軽快な操作感を実現しています。ヒーターや換気装置も改良され、快適性も向上しています。

ロードホールディング、乗り心地、操縦性、居住性など、多くの面でMK2から大きく改善されたSタイプですが、販売台数は期待を下回りました。特に主要輸出先のアメリカでは不振でした。アメリカ市場では四輪独立懸架のメリットがそれほど大きくなく、開発期間や費用の制約から、スタイリングや150kg以上増加した車両重量が問題視されたとされています。そのため、ジャガーはMK2をエントリーモデルとしてSタイプと並行して販売を継続し、SタイプをマークXとMK2の中間車種という位置づけとしました。

1966年には、フロント部分をマークX風に変更した新型車、ジャガー420が登場。マークXは420Gと改名されましたが、Sタイプも引き続き生産されました。XJ6が登場する1968年まで、ジャガーのサルーン車はMK2の後継モデル「240/340」、Sタイプ、420、420Gという4車種が同時に生産されるという複雑な状況が続きました。

Sタイプの総生産台数は24,993台でした。年ごとの生産台数は、1963年が43台、1964年が7,032台、1965年がピークの9,741台、1966年が6,260台、1967年が1,008台、1968年が909台でした。日本にも輸入され、当時の総代理店である新東洋企業を通じて販売されました。

発売当時は必ずしも高い評価を得られなかったSタイプですが、1998年にはそのデザインテーマを受け継いだ新型Sタイプが登場し、2007年まで生産されました。このことから、Sタイプは歴史的な名車としての地位を確立していると言えるでしょう。

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