ジャガー・XJR-17

ジャガーXJR-17：幻のレーシングカーの軌跡

1991年、名門レーシングチームであるトム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）は、アメリカン・レーシングシーンに挑戦しようと、新型プロトタイプレーシングカー、ジャガーXJR-17を開発しました。その目標は、IMSA-GTPライトクラスでの勝利でした。しかし、この野心的な計画は、皮肉にも実現することなく終わります。

XJR-17は、TWRの技術力が凝縮されたマシンでした。ベースとなったのは、同チームが過去に開発したジャガーXJR-16のモノコック。これに、ジャガーXJR-14を彷彿とさせるシャープなウイング付きノーズを組み合わせ、空力性能を高めました。リアウイングは、シンプルながらも効果的な一枚翼を採用。心臓部には、XJR-16を改良した3.5リッターV型6気筒自然吸気エンジンを搭載し、高いパワーと信頼性を両立させていました。

しかし、計画は暗礁に乗り上げます。TWRは、スポンサーの撤退により、スポーツカー世界選手権（SWC）からの撤退を余儀なくされました。IMSA-GTPへの参戦は1992年も継続するものの、新たな目標としていたGTPライトへの参戦は実現せず、IMSA-GTP参戦自体も1993年の開幕戦で終止符を打つことになります。

その後、XJR-17はRMモータースポーツに売却されます。同チームは、SWCのプライベーター向けカテゴリーであるFIAカップ参戦を目指してXJR-17の購入を決断しましたが、参戦に必要な資金を確保することができず、計画は頓挫。さらに、1993年にはSWC自体が消滅したため、RMモータースポーツはXJR-17を手放すことになります。

こうして、XJR-17はコレクターの手に渡り、現在ではヒストリックカーレースやイベントなどでその姿を現しています。これらのイベントでは、XJR-17は本来の活躍の場となるはずだったIMSA-GTPクラスでTWRジャガーが使用していた、バド・ライトを模したカラーリングで走行していることが多いです。

ジャガーXJR-17は、その潜在能力の高さと、実現しなかった輝かしい未来によって、レーシングカー史上に独特の足跡を残しました。開発陣の技術力と情熱が凝縮されたこのマシンは、決して忘れられることのない一台と言えるでしょう。開発計画の頓挫という、悲しい歴史を持つものの、その美しいデザインと高い性能は、多くのモータースポーツファンを魅了し続けています。もしも、このマシンが本来の舞台で活躍していたら、どのような結果を残していたのか。想像するだけで胸が高鳴る、そんな一台です。

参考文献：『レーシングオンNo.472 Jaguar's C特集号』三栄書房ISBN 978-4-7796-2237-3

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