ジャスティン・クライファート

オランダ・ザーンダム生まれのサッカー選手、ジャスティン・クライファートは、1999年 5月5日にこの世に生を受けました。主にフォワードとしてプレーし、現在はプレミアリーグのAFCボーンマスに所属。

彼の名前を語る上で欠かせないのが、父親が元オランダ代表でアヤックスやバルセロナで輝かしいキャリアを築いたパトリック・クライファートであること。まさにサッカー界のサラブレッドと言えるでしょう。四人兄弟の次男であるジャスティンには、兄のクインシー、弟のルベン、そして異母兄弟のシェーンがいます。兄のクインシーはかつてアヤックスやフィテッセの下部組織でディフェンダーとしてプレーしましたが、現在はアーティストとして活動。弟のルベンは父やジャスティンと同じくフォワードとしてカーザ・ピアACに所属しています。一方、異母兄弟のシェーンはバルセロナの下部組織でディフェンダーとしてプレーするなど、兄弟それぞれが異なる道を歩んでいます。

特筆すべきは、ジャスティンがサッカー選手として非常に稀有な記録を保持している点です。欧州主要5大リーグ（イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス）全てにおいて、リーグ戦で得点を挙げた選手の一人であり、さらに全てのリーグでプレーした選手としても名を連ねています。

クラブ経歴

アヤックスでの出発

父親と同様、ジャスティンも名門アヤックス・アムステルダムのアカデミーで才能を磨きました。リザーブチームであるヨング・アヤックスの一員として、2016年9月にエールステ・ディヴィジ（オランダ2部）のMVVマーストリヒト戦でプロの舞台に立ちます。2017年1月にはエールディヴィジ（オランダ1部）のPECズヴォレ戦でトップチームデビューを果たし、同年3月のSBVエクセルシオール戦でエールディヴィジでの初ゴールを記録しました。このゴールは、偶然にも父パトリックがアヤックスで記録した最後のゴールからちょうど10年と1日後のことでした。さらに、2017年11月のローダJC戦ではキャリア初のハットトリックを達成するなど、若くして頭角を現します。

しかし、将来については複雑な心境を抱えていたようです。2018年2月には「アヤックスにあと数年残ってから、1億6000万ユーロ（約210億円）でバルセロナやレアル・マドリードのようなトップクラブへ行きたい」と語っていましたが、5月に入るとアヤックスとの契約延長交渉が難航。報じられるところによると、クラブ史上最高額となる年間150万ユーロの給与や将来の移籍金の40%を要求したとされ、合意に至りませんでした。この状況について、彼は「最初は残留するつもりだったけれど、あまりに多くのことが立て続けに起こった」と述べ、クラブの監督交代の多さなどを批判する発言も飛び出しました。

ローマへの移籍と記録達成

2018年6月22日、イタリアのASローマと2023年までの契約を結び、新たな挑戦の場をセリエAに移しました。移籍金は1725万ユーロに加え、最大150万ユーロのボーナスが付帯。さらに、将来ローマから他クラブへ移籍する際の移籍金が2500万ユーロを超えた場合、超過分の10％（上限400万ユーロ）がアヤックスに支払われるという条件も盛り込まれました。ローマでの背番号は「34」を選択。これは、アヤックス時代のチームメイトであり、脳に重い損傷を負って懸命に闘病を続ける友人、アブドゥルハーク・ヌーリの背番号への敬意を示すものでした。

ローマ加入後、2018年8月19日のセリエA開幕戦、トリノFC戦に途中出場してデビュー。この試合でエディン・ジェコの決勝ゴールをアシストする活躍を見せます。同年10月2日にはUEFAチャンピオンズリーグのヴィクトリア・プルゼニ戦で得点を挙げ、19歳150日でのゴールは、ローマの選手としてチャンピオンズリーグにおける最年少得点記録を更新。同時に、オランダ国外のクラブで得点したオランダ人選手としても最年少記録となりました。12月16日のジェノア戦でセリエA初ゴールも決めています。2019-20シーズンからは背番号を「99」に変更し、サッスオーロ戦でのゴールなどでチームに貢献しました。

レンタル移籍での経験

ローマでのプレーを経て、ジャスティンは経験を積むために欧州各地へのレンタル移籍を経験します。2020年10月5日にはドイツのRBライプツィヒへ、2021年7月20日にはフランスのOGCニースへ（いずれもレンタル移籍）、そして2022年9月1日にはスペインのバレンシアCFへローン移籍しました。これらの経験を通じて、異なるリーグのスタイルに適応する能力を養いました。

ボーンマスでの歴史的記録

そして2023年6月23日、ジャスティンはローマからイングランドのAFCボーンマスへの完全移籍を果たしました。この移籍は、彼のキャリアにおける重要なマイルストーンとなります。ボーンマスでのプレーにより、彼はフロリン・ラドチョウ、クリスティアン・ポウルセン、ステヴァン・ヨヴェティッチに続き、史上4人目となる欧州主要5大リーグ全てでプレーした選手となりました。特に24歳での達成は、この記録における史上最年少記録として歴史に刻まれました。

ボーンマス加入後、同年11月25日のシェフィールド・ユナイテッド戦で、リーグ戦10試合目にして待望のプレミアリーグ初ゴールを記録します。そして、この初ゴールは彼に新たな歴史的な記録をもたらしました。ジャスティンは、欧州主要5大リーグ全てで得点を挙げた3人目の選手となったのです（他の2人はラドチョウとヨヴェティッチ）。21世紀に入ってからは、ヨヴェティッチに次いで史上2人目の快挙達成でした。

さらに、2024年11月30日のウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦では、プレミアリーグ史上初となるPKのみでのハットトリックを達成。年が明けた2025年1月18日のニューカッスル・ユナイテッド戦でもハットトリックを決め、シーズン2度目の偉業を成し遂げるなど、プレミアリーグの舞台でその得点力を証明しています。

代表経歴

若くからオランダ代表としてプレーしており、2016年5月にはアゼルバイジャンで開催されたUEFA U-17欧州選手権にオランダ代表の一員として出場。チームは準決勝で敗退しましたが、国際舞台での経験を積みました。フル代表には2018年3月26日、ポルトガル代表との親善試合に途中出場しデビューを飾っています。

エピソード

UEFAヨーロッパリーグ 2016-17シーズンの決勝戦終了後、対戦相手だったマンチェスター・ユナイテッドFCのジョゼ・モウリーニョ監督から直接移籍を勧められたことが話題となりました。これは、父パトリックがバルセロナ在籍時にモウリーニョがコーチを務めていたという縁もあり、注目を集めました。

サッカー界のレジェンドを父に持ちながらも、自身の力で欧州各地を渡り歩き、歴史的な記録を次々と打ち立てるジャスティン・クライファート。ボーンマスでの活躍を通じて、さらなる高みを目指しています。

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