ジャッキー・チェンの醒拳

『ジャッキー・チェンの醒拳』

『ジャッキー・チェンの醒拳』（原題：龍騰虎躍、英題：Fearless Hyena II）は、1983年に香港で製作されたアクション映画です。本作は、映画プロデューサー・ロー・ウェイの手がけた作品で、監督にはチェン・チュアンが起用されています。この映画は、複数の未公開素材を使用し、ジャッキー・チェンの過去の映像をつなぎ合わせる形で制作されたことが特徴です。

概要

本作の特徴として、『クレージーモンキー 笑拳』の撮影中に生じたNGカットや、未完成作品『鬼手十八翻』の映像、および他作品のカットを組み合わせた形で構成されています。このような映画製作手法は、ブルース・リーの作品『死亡遊戯』を彷彿とさせますが、その場合とは異なり、主演のジャッキー・チェンは健在でした。この手法からは、当時のジャッキー・チェンの人気の高さが伺えます。なお、別の編集バージョンも存在し、その際に無断で使用されたシーンによって、ジャッキーはロー・ウェイに対して法的措置を取る事態に至りました。

ジャッキーは自伝の中で、本作について「ローが自分の姿を誹謗する内容を流用し、納得のいかない形で作品が進行したことに怒っている」と述べています。裁判の後、ロー・ウェイの作品はユニバーサル社からリマスターされ、再度公開されることになりますが、ジャッキーにとっては思い出深い作品というよりも、迷惑な記憶として残っているようです。

制作の背景

ジャッキー・チェンとロー・ウェイの関係は複雑です。1974年、ジャッキーは『ジャッキー・チェンの秘龍拳 少林門』で再デビューを果たしましたが、その後しばらく映画界から離れました。1976年にロー・ウェイと契約し、彼の会社で多くの映画に出演しました。最初は真面目な役柄での起用が望まれましたが、勝ち目がなかったため、ジャッキーは次第に不満を抱くようになりました。

その後、ジャッキーは他の製作会社に移る決断をし、ゴールデン・ハーベストと契約しました。しかし、過去の契約が問題となり、ローは契約書を改竄してジャッキーを拘束しようとしました。この騒動は「ジャッキージャック事件」と呼ばれ、最終的にはゴールデン・ハーベストが勝つ形になりました。

あらすじ

物語は清朝末期の広東を舞台に、六合八卦拳の使い手であるチン兄弟が末世流の兄弟に命を狙われるところから始まります。彼らはそれぞれ子供を連れて逃げますが、数年後、青年に成長したロン（ジャッキー・チェン）はギャンブルとケンカに明け暮れていました。しかし、父親を敵に殺され、兄弟も犠牲になったことから、ロンは復讐に燃え、特訓に打ち込みます。ロンと従兄弟は力を合わせ、仇討ちを果たすべく立ち上がります。

キャストとスタッフ

日本語吹替版では、翻訳を酒東健児が担当しました。主なキャストには鹿島信哉、辻つとむ、山口勝平などが含まれ、スタッフには監督のチェン・ツァンや製作総指揮のロー・ウェイなどが名を連ねています。

日本における公開

本作は日本では珍しく日本語吹替版で公開され、関東では「ジャッキー・チェン拳スペシャル」として、地方ではアニメ『北斗の拳』と同時上映されました。劇場版はかなり短縮されており、日本でのテレビ放送でも、90分枠での制作となっていました。

非常に興味深い制作経緯と物語の奥深さを持つ『ジャッキー・チェンの醒拳』は、アクションファンには一見の価値がある作品です。

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