ジャック・バルレリエ

ジャック・バルレリエ（Jacques Barrelier, 1606年 - 1673年9月17日）は、17世紀のフランスを代表する植物学者であり、同時にドミニコ会修道士でもありました。パリで生まれたバルレリエは、1634年に医師の資格を取得した後、聖職者としての道を選びました。しかし、その傍らで、彼は植物学への深い情熱を燃やし続けました。

バルレリエは、植物学の研究のため、フランスのプロヴァンス地方やラングドック地方、さらにはスペインやイタリアへと足を運びました。特にローマには23年間滞在し、その地で植物園を設立しました。このローマ滞在中に、彼は『世界の庭園』（"Hortus Mundi" または "Orbis Botanicus"）という大著の執筆に取り組みました。

『世界の庭園』は、世界の植物を網羅的に紹介しようとした意欲的な作品であり、出版のために多数の銅版図が製作されました。しかし、バルレリエがパリに戻った後、病に倒れ、その生涯を閉じたため、この大著は未完に終わってしまいました。さらに、不幸なことに、原稿は火災によって失われてしまい、残されたのは銅版のみでした。

それから30年後、アントワーヌ・ド・ジュシューによって、残された銅版が再編集され、『フランス、スペイン、イタリアの植物図』（Icones Plantarum per Galliam, Hispaniam et Italiam observatæ）として出版されました。この図譜には、フランスとスペインの植物図324点と、イタリアの植物図1932点が収録されており、その中には当時まだ知られていなかった数百種もの植物が含まれていました。バルレリエの緻密な観察眼と記録が、後世の植物学研究に多大な貢献を果たしたことは間違いありません。

植物学におけるバルレリエの功績を称え、シャルル・プリュミエはキツネノマゴ科の亜科（Barleria）に彼の名前を献名しました。また、多くの植物の学名にも、彼の名前に由来する「barrelieri」という語が用いられています。

バルレリエの主要な著作としては、アントワーヌ・ド・ジュシューが編集した『フランス、スペイン、その他の地域で観察された植物』（Plantae per Galliam, Hispaniam et aliam observatae, Paris, 1714）が挙げられます。この著書は、バルレリエが遺した膨大な植物図をまとめたものであり、植物学史における貴重な資料となっています。

バルレリエは、生涯を植物の研究に捧げ、その情熱と知識は後世に受け継がれています。彼の業績は、植物学の発展に大きく貢献しただけでなく、科学に対する真摯な姿勢を示した偉大な学者として、今もなお語り継がれています。

参考文献

Jean Pierre Nicéron: Mémoires pour servir à l’histoire des hommes illustres dans la république des lettres: avec un catalogue raisonné de leurs ouvrages. Briasson, Paris 1729–1745 43 Bände
電子化された著書 Plantae per Galliam … Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes
Plantae per Galliam …* Digital Library of the Real Jardín Botánico of Madrid

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