ジャック＝ルイ・ダヴィッド

ジャック＝ルイ・ダヴィッドの生涯と業績

ジャック＝ルイ・ダヴィッドは1748年8月30日、フランスのパリに商人の子として生まれました。彼の人生は、父親を9歳で失ったことから始まり、その後裕福な叔父の手で育てられました。ダヴィッドが絵画に興味を示すと、叔父は彼をロココ絵画の大家フランソワ・ブーシェの弟子として育てようとしましたが、ブーシェは弟子を取っておらず、ダヴィッドは画家ジョゼフ＝マリー・ヴィアンに師事することとなります。

ダヴィッドは修業を重ね、1774年に《アンティオコスとストラトニケ》によってローマ賞を受賞しました。この受賞により、彼は国費でイタリアに留学する機会を得ました。彼の留学時期は1775年から1780年までの約5年間であり、在学中にプッサンやカラヴァッジョなど17世紀の巨匠の作品を研究しました。このイタリアでの経験は、ダヴィッドの作風をロココ特徴の強いものから新古典主義の硬質な画風へと変化させました。

1784年、彼はルイ16世から注文を受けて制作した《ホラティウス兄弟の誓い》によって大きな評判を得ました。この作品は、同時代の画家たちから「今年のサロンの真の勝利者」と称されるほど賞賛を受け、ダヴィッドの代表作として名を馳せることになります。

1789年、フランス革命が勃発すると、ダヴィッドはジャコバン党に関与し、政治活動に乗り出します。彼は《球戯場の誓い》を描き、バスティーユ襲撃にも参加。1792年には国民議会の議員にも選出されました。翌年、革命家マラーの死を描いた《マラーの死》を発表し、1794年にはロベスピエールに協力して最高存在の祭典の演出を担当しました。こうした政治活動によって、ダヴィッドはフランス芸術界の影響力を持つ人物となり、王立アカデミーを廃止したことから「筆のロベスピエール」とも呼ばれました。

しかし、1794年にロベスピエールが失脚すると、ダヴィッドも危機に直面し、一時拘禁されます。この時期に彼は未完成の自画像や唯一の風景画を残しました。1795年に恩赦を受けた後、ダヴィッドは自らの経験を元に若手画家の指導に力を入れ、数百人を育て上げます。

1797年にはナポレオン・ボナパルトのスケッチを行いましたが、肖像画としては完成には至りませんでした。1799年にナポレオンが第一執政に就任すると、彼はダヴィッドにフランスの勝利を記念する絵を依頼。特に1800年にはレカミエ夫人の肖像を依頼されますが、ダヴィッドの遅筆により未完成のまま終わります。

その後、ダヴィッドはナポレオンの庇護の下、1804年には首席画家に任命され、1806年から1807年にかけて制作した《ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠》は、縦6.1メートル、横9.3メートルの大作となりました。1808年には「帝国における騎士ダヴィッド」の爵位が授与され、その名声は不動のものになります。

しかし、1815年のナポレオンの失脚に伴い、再びダヴィッドも失脚し、1816年にはブリュッセルに亡命しました。彼の生涯は多くの波乱に満ち、1825年に同地で77年の人生を終えました。ダヴィッドはルイ16世の処刑に賛成票を投じたため、彼の遺体はフランスに帰国が許されませんでしたが、心臓はペール・ラシェーズ墓地に埋葬されています。彼の作品は、当時の思想や政治を反映したものとして、現在も新古典主義の傑作として評価されています。

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