最高存在の祭典

最高存在の祭典

最高存在の祭典（さいこうそんざいのさいてん、La fête de l'Être suprême）は、フランス革命の激動の中で、マクシミリアン・ロベスピエールが推進した特異な宗教祭典です。この祭典は1794年6月8日に、テュイルリー宮殿とシャン・ド・マルス公園で行われました。祭典の背景には、ロベスピエールの独裁政権と、恐怖政治による社会の混乱が存在していました。

フランス革命が最高潮に達し、ロベスピエールが権力を握っていた時、彼は従来のキリスト教を批判し、新たな道徳規範を求めていました。この時期、彼は「人間の理性を崇拝する」必要性を感じており、従来の宗教に代わる「最高存在」と呼ばれる概念を主張していました。彼にとって、キリスト教は再構築されるべきものであり、宗教的信仰がなくてはならなかったのです。

この思潮は、1793年の「理性の祭典」に端を発します。この祭典では、無神論的な趣旨で「自由と理性の女神」が登場しましたが、ロベスピエールはこれを否定し、新たな「公教育」の一環として祭典を再編しようとしました。彼は「神が存在しないなら、それを発明する必要がある」とも語っており、これが彼の思考の根底にあったと言われています。

1934年5月7日の法令により、6月8日に開催された「最高存在の祭典」では、ロベスピエールが直接関与しました。彼の思想にはルソーの「市民宗教」が影響を与えており、この祭典は「理性の崇拝」や「最高存在の崇拝」を強調するものでした。この祭典は、革命的宗教とも形容されました。

儀式の内容

儀式が始まったのは朝の8時、ポン・ヌフの大砲が轟くと、数十万の人々が参集しました。祭典では、テュイルリー宮殿を目指す行列が樫の枝を持つ男と薔薇を持つ女たちの先導によって進みました。国民衛兵によって整然と行われた儀式では、まず「無信仰」を象徴する像が焼かれ、その後「叡智」「最高存在」の像が登場しました。その横には、ロベスピエール自身が「美徳の司祭」として起立し、最高存在に敬意を表しました。

ロベスピエールは「明日から、更なる専制者と戦う」と誓い、シャン・ド・マルスへの行進が続きました。この祭典は、画家ジャック＝ルイ・ダヴィッドの手によって華やかに演出されました。彼は政治的意義と市民宗教としての目的を持たせるため、細心の注意を持って儀式を計画しました。

この祭典は新しい政治文化の創造の一環として、革命の精神を鼓舞する重要な役割を果たしましたが、一方で、ロベスピエールに反対する勢力に対する抑圧ともなり、彼自身はのちに失脚し、ギロチンにかけられる運命を辿ることになります。

このように、最高存在の祭典はフランス革命の重要な出来事であり、革命が新たな道徳や信仰を模索する中での一つの象徴的な試みでした。

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