ジャハーン・シャー

ジャハーン・シャーの生涯と歴史的背景

ジャハーン・シャー（Jahan Shah, 1749年 - 1790年）は、北インドのムガル帝国で重要な位置を占めた対立君主である。彼は第15代皇帝シャー・アーラム2世と敵対し、その歴史的な役割は良く知られてはいないが、その生涯をたどることは、ムガル帝国の複雑な政治状況を理解する手助けとなる。

幼少期と家族背景

1749年、ジャハーン・シャーはムガル帝国の第13代皇帝アフマド・シャー・ドゥールーニーの息子として誕生した。彼の教育や性格において、皇帝家の血筋としての教育が施されたと考えられるが、運命は彼を思いもよらぬ方向へ導く。1831年、父アフマド・シャーの治世は一定の安定を見せていたが、わずか3歳の時に彼はパンジャーブ太守に任命されるなど、若くして政治の表舞台へと引き込まれることとなった。

対立の始まり

ジャハーン・シャーの運命が変わるのは、1754年に父がガーズィー・ウッディーン・ハーンに廃位され、彼の家族が権力闘争の渦に巻き込まれることとなったからである。この時、ジャハーン・シャーはまだ幼いながらも、帝国の政治的な混乱を目の当たりにすることになる。

1788年、状況は一変する。彼の継母であるマリカ・ウッザマーニーの招きに応じて、グラーム・カーディル・ハーンがデリーに入城。そこでシャー・アーラム2世は廃位され、ジャハーン・シャーは新たに「皇帝」と名乗るが、彼の権力は非常に脆弱であった。実際にはグラーム・カーディル・ハーンの傀儡として扱われ、独自の権限を持たぬまま、名義上の皇帝としての地位にとどまった。

ジャハーン・シャーの治世

彼の治世は短命であり、1788年から1790年までのわずか2年間であったが、その間に彼は多くの試練に直面した。特に、シャー・アーラム2世の支持を受けるマラーターのマハーダージー・シンディアがデリーに進軍してくると、彼の立場はますます困難になった。ロイヤリストの圧力から逃れるべく、ジャハーン・シャーは10月2日にデリーを出るが、わずか数週間後の10月16日、マラーター軍に捕らえられ廃位されることになる。彼の短い治世は、ムガル帝国内部の勢力抗争と、それによる悲劇の縮図と言えるだろう。

最後の時

1790年、ジャハーン・シャーはシャー・アーラム2世の命によって処刑される。彼の死は、ムガル帝国における権力闘争の一つに過ぎないが、それでも彼の存在は歴史に刻まれた。彼の名は長く伝わることはなかったが、彼の生き様は帝国の盛衰を物語る重要な一部分である。

参考文献

• - フランシス・ロビンソン 著、月森左知 訳『ムガル皇帝歴代誌 インド、イラン、中央アジアのイスラーム諸王国の興亡（1206年 - 1925年）』創元社、2009年。

関連項目

• - シャー・アーラム2世

ジャハーン・シャーの物語は、彼が置かれた歴史的背景や政治的状況を理解する上で、重要な手がかりを与えてくれる。彼が生きた時代を知ることは、ムガル帝国の複雑な歴史を探求する上で決して無駄にはならない。

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