ジャンカルロ・デ・カルロ

ジャンカルロ・デ・カルロ：建築と都市の調和を追求した巨匠

ジャンカルロ・デ・カルロ (1919年-2005年) は、20世紀イタリアを代表する建築家、都市計画家、そして都市研究者です。彼の生涯は、反ファシズム運動への関与から始まり、建築設計、都市計画、教育、そして国際的な活動にまで広がる、波乱に富み、多角的なものでした。

ミラノ工科大学で工学技術を学んだ後、ローマ大学で建築を専攻。しかし、兵役を経て帰国後はプロレタリア統一運動、無政府主義運動など、社会運動にも積極的に参加しました。この経験は、彼の建築思想の根底に、社会正義と人々の生活への深い関心を形成することとなります。

1946年には建築設計事務所を開設し、ヴェネツィア建築大学を卒業後も設計活動を継続。公共住宅などの設計に携わりながら、1952年にはCIAM（国際現代建築会議）のイタリアグループに参加、雑誌『カサベラ・コンティヌイタ』の編集委員も務めました。

デ・カルロの活動における重要な転換点は、1955年の「チームX」の結成です。CIAM準備会議で出会った若手建築家たちと結成したこのグループは、既存のモダニズム建築への批判と、より人間的な都市空間の創造を目指しました。

ウルビーノとヴェネツィアを拠点に、デ・カルロは独自の教育活動を展開。特に1960年代には、ウルビーノ市の都市計画・都市開発の中核を担い、近代的な建築技術と歴史的都市環境との調和に挑みました。彼の都市計画は、単なる建物の建設ではなく、歴史的文脈を尊重しながら、人々の生活に寄り添った空間の創造を追求するものでした。

70年代には雑誌『空間と社会』を刊行・編集し、建築都市計画国際研究所を設立。イタリア国内外で精力的な教育活動を展開しました。ヴェネツィア建築大学、ジェノヴァ大学で教鞭をとり、建築の要素と記念碑の実測調査、地域部市計画学、建築構成学などを講義。後進の育成にも尽力しました。

デ・カルロの都市計画におけるアプローチは、地区詳細計画を通じて、イタリアの都市空間にみられる地と図の関係を詳細に分析することでした。建物と街路や広場といった公共空間の両方に着目し、地区施設の連続性と生活の展開の仕方を分析することで、都市改造事業の枠組みと形態学的な保存を両立させました。ウルビーノ市の都市基本計画（PRG）やジェノヴァ市ブレ地区修復計画などは、その代表的な成果です。1985年のガラッソ法に基づく風景計画に対応するため、1994年にはパオロ・スパーダと協働し、新しいウルビーノの都市計画を発表しています。

デ・カルロの業績は高く評価され、1988年にはウルフ賞芸術部門建築分野を槇文彦氏と共同受賞、1993年にはRIBAゴールドメダルを受賞しました。彼の著作『Le Corbusier antologia de gliscritti 1945』なども、建築・都市計画分野における重要な文献として今日でも参照されています。

ジャンカルロ・デ・カルロは、建築家としてだけでなく、都市計画家、教育者、そして社会活動家としても、20世紀イタリアの建築・都市のあり方に大きな影響を与えた人物でした。彼の思想と実践は、現代の建築と都市計画にとっても、重要な示唆を与え続けています。

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