ジャンヌ・ド・ラ・モット・ヴァロア

ジャンヌ・ド・ヴァロワ＝サン＝レミ：波乱の生涯と首飾り事件

ジャンヌ・ド・ヴァロワ＝サン＝レミ（Jeanne de Valois-Saint-Rémy, comtesse de la Motte-Valois, 1756年7月22日 - 1791年8月23日）は、フランスの伯爵夫人であり、首飾り事件の中心人物として歴史に名を残しました。通称ラ・モット夫人として知られ、旧王家ヴァロア家の末裔を自称していました。

生い立ちと結婚

ジャンヌの父、ジャック・ド・サン・レミ男爵は、アンリ2世の庶子の子孫であり、生活は困窮していました。9歳で両親を亡くしたジャンヌは、貴族の娘としての教育を受けるため、ロンシャン修道院の寄宿学校に入学しました。しかし、修道女になることを嫌い、22歳で修道院を逃亡。1780年、バール＝シュル＝オーブでマルク・アントワーヌ・ニコラ・ド・ラ・モット伯爵と出会い、結婚しました。夫は伯爵を名乗っていましたが、その出自には疑念が残ります。

首飾り事件

1786年、ジャンヌは歴史を揺るがす大事件、首飾り事件を引き起こします。この事件は、当時のフランス社会に大きな衝撃を与え、王室の権威を大きく傷つけることになりました。

事件の背景

事件の背景には、ロアン枢機卿の存在がありました。ロアンは、宮廷司祭長という地位にありながら、放蕩な生活を送っていたため、マリア・テレジアとその娘であるマリー・アントワネット王妃に嫌われていました。宰相の地位を狙うロアンに近づいたジャンヌは、王妃の親しい友人であると偽り、王妃の名を騙って金品を騙し取っていました。

事件の勃発

宝石商シャルル・ベーマーが、先王ルイ15世が愛人デュ・バリー夫人のために作らせたものの、契約が立ち消えになっていた高価なダイヤの首飾りをマリー・アントワネットに持ち込みました。しかし、あまりの値段の高さに王妃は購入を拒否。これを知ったジャンヌは、ロアンに王妃が首飾りを欲しがっていると嘘をつき、代理購入を持ちかけました。

ジャンヌの巧妙な嘘に騙されたロアンは、首飾りを代理購入し、ジャンヌに渡してしまいます。しかし、首飾りの代金が支払われないことに業を煮やしたベーマーの訴えによって、事件が発覚。ジャンヌとロアンをはじめとする関係者が次々と逮捕される事態となりました。

裁判と判決

マリー・アントワネットは、この事件に激怒し、自らの潔白を証明しようとしました。しかし、高等法院は王妃にとって不利な判決を下します。1786年3月、ロアンは無罪、ジャンヌは有罪という判決が下されました。

ジャンヌは、鞭打ち刑を受けた後、両肩に泥棒を意味する「V」の焼印を押され、サルペトリエール監獄で終身禁錮刑に処されました。しかし、民衆からの同情を集めたジャンヌは、監獄を脱走し、イギリスへ逃亡しました。

その後と死

ロンドンに逃亡したジャンヌは、回想録と首飾り事件の顛末をまとめた書籍を出版しました。しかし、1791年、精神錯乱の発作により窓から転落し、35歳でその生涯を閉じました。強盗に襲われて転落したという説もあります。

ジャンヌが残したもの

ジャンヌの起こした首飾り事件は、フランス革命の背景となる社会不安を増大させた要因の一つとも言われています。彼女の生涯は、様々な小説や映画、漫画で描かれ、後世にも大きな影響を与え続けています。

関連作品

ベルサイユのばら（ロザリーの義姉という設定で登場）
マリー・アントワネットの首飾り (映画)
* イノサン

ジャンヌ・ド・ヴァロワ＝サン＝レミは、その波乱に満ちた生涯と大胆な行動で、歴史にその名を刻んだ人物です。

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