ジャン・カニール・クラス

ジャン・カニール・クラス（Jean Caneel-Claes、別名：ジャン・アニール・クラエス、J.C Claes）は、1909年に生まれ、1989年に没したベルギー出身の著名な造園家、ガーデンデザイナーです。

彼のキャリアは、1931年にラ・キャンブレのボザール（国立美術学校）を卒業したことから始まりました。卒業後すぐに、彼はオーデルゲムにある自身の邸宅に最初の作品となる庭園を制作しています。その後、国内外で活動の幅を広げ、1939年に開催されたリエージュ国際博覧会にも作品を出展しました。また、国際的な造園・庭園家のネットワーク構築にも尽力し、クリストファー・タナードらと共に国際造園・庭園家団体であるAIAJMの結成に貢献しました。1950年代には、ベルギー領コンゴ（現在のコンゴ民主共和国）で都市計画の分野にも携わっており、帰国後もベルギー国内における国立公園の設立に尽力するなど、広範な活動を展開しました。

クラスはいくつかの代表的な庭園設計で知られています。その一つが、オランダに位置する「ニースガーデン」です。1930年に設計されたこの庭園は、長く狭い敷地を効果的に活用した好例とされています。芝生と緩やかに湾曲する小道が配された空間は、その美しさとシンプルさが見事に調和しています。池を備えたこの庭は、モダン庭園の古典的な形態を示すものの一つとされており、住宅の近くには簡素なパティオと広々とした芝生空間が設けられています。敷地全体を蛇行する小道が巡り、配置された二本の樹木が空間に独特のアクセントを与えています。特に印象的なのは、住宅脇に直線状に階段配置された約50センチ角の大きな正方形タイルです。このタイルの傍らには長方形の池が設けられており、タイルの上を歩く人々を水面越しに眺められるような工夫が凝らされています。小道はパーゴラの下を通り抜け、ヘデラやバラが絡まる半屋根付きのテラスへと続いています。周囲の小さな生け垣が、このテラス空間に落ち着いた彩りを添えています。

もう一つの主要な仕事として挙げられるのが、ベルギー国内にあるバロン・フランツ・ヴォーゲル・ホテル・ポシェットの庭園です。この建物は、名家ポシェット家の邸宅として、元々18世紀後半に美しい中庭とフランス式庭園を備えていました。レンガと石灰岩で建てられた邸宅は、エントランス付近の飾り球で中断された控え壁と付柱が隣接するなど、古典的な外観を持っています。石造りの基壇の上に立つこの建物は、2階建てで、トゥルネー様式の6つの開口部で構成されています。1947年、当時のベルギー総務大臣であったバロン・フランツ・ヴォーゲルが、クラスの助力を得てこの庭園の設計変更を行いました。この歴史的な庭園は、後に記念事業の一環として整備され、1973年以降は一般に公開されています。

さらに、ブリュッセル南部に位置するアベニュー・ドゥ・ウルグアイ5にあるワイナンツ社提供の宿舎に付随する庭園も、クラスの設計によるものです。この建物は、1920年代以降のモダニズム建築の影響を受けており、機能性を重視した基本的な幾何学形態、1938年に建築家ヴィクトルによって設計された2階建ての陸屋根、鉄筋コンクリートを用いた連続窓やフラットルーフの使用などが特徴です。クラスはこのようなモダニズム建築に調和する庭園空間を創出しました。

ジャン・カニール・クラスは、その多様な活動と個性的でありながらも洗練されたデザイン手法により、20世紀ベルギーおよび国際的な造園デザインの分野において重要な足跡を残しました。

（参考: 『ランドスケープデザインの歴史』 武田史朗, 山崎亮編著他, 学芸出版社, 2010年）

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