ジャン・ド・ノートルダム

ジャン・ド・ノートルダム（Jean de Nostredame, 1522年? - 1577年頃）は、16世紀フランスの法曹家であり歴史家です。彼の兄は、有名な占星術師ミシェル・ド・ノートルダム、すなわちノストラダムスです。

生涯

ジャンの少年期や青年期については詳しい記録が残っていません。しかし、1543年から1555年にかけてエクス＝アン＝プロヴァンスで公証人として活動し、その後エクスの高等法院検事を長く務めました。兄ミシェルの著書『化粧品とジャム論』（1555年）には、「エクスの検事」であるジャンに宛てた献辞が収録されています。

ジャンは本業の傍ら、プロヴァンス史の研究に情熱を注ぎました。その研究成果は、『古プロヴァンスの最も名高い詩人たちの生涯』（リヨン、1575年）として結実しました。この文献は、プロヴァンスの詩人たちの生涯を記録した貴重な資料として、渡辺一夫などの研究者からも高く評価されています。

同書は同年、イタリア語版も出版され、1702年と1722年に再版されています。フランス語版は1913年に増補版が復刻され、1971年にはオリジナルの復刻版も刊行されました。1913年版はフランス国立図書館のデジタルアーカイブ「ガリカ」にリストアップされています。

また、800ページ近くに及ぶプロヴァンス史研究の草稿がエクスの市立図書館に現存しています。この草稿は生前に出版されることはありませんでしたが、甥のセザール・ド・ノートルダムがその研究を引き継ぎ、『プロヴァンスの歴史と年代記』として出版しました。

かつては1590年没とされていましたが、これはピトン『エクス市の歴史』（1666年）に基づく誤った情報でした。甥のセザールや同時代の知人の証言、1577年2月の段階で故人扱いしている公文書などの存在から、1576年末から1577年始めに没したと推測されています。

1618年に出版された匿名のパンフレット『今年1618年に見られた驚異と徴の予言』が、ジャンの著作とされたことがありますが、これは誤りです。「プロヴァンスの紳士」という変名が用いられていたことが根拠とされましたが、現在では否定されています。

生年について

以前は1507年にサン＝レミ＝ド＝プロヴァンスで生まれたとされていましたが、これは出典不明の情報でした。エドガール・ルロワは、洗礼記録が1522年2月19日であることから、実際の生年を1522年としました。この説は、ジャンに関する研究で博士号を取得したカザノヴァ（J.Y.Casanova）などによって支持されています。

一方、ルロワの伝記改訂版の編者は、1507年頃を正しい生年とし、ノストラダムスの弟には、本項で扱っているジャンとは別に、1522年に生まれ1534年以前に没したもう一人のジャンがいたとする見解を示しています。

他のジャン・ド・ノートルダム

ノストラダムスの一族には、「ジャン・ド・ノートルダム」という名の人物が複数いました。しかし、この項目で扱ったジャン以外に目立った業績を残した者はいません。ノストラダムスの弟ベルトランの息子の一人、ノストラダムスの弟アントワーヌの息子の一人が、同名でした。

もう一度検索