ジャン・ド・リーニュ

ジャン・ド・リーニュ：波乱の生涯を送ったスペイン領ネーデルラントの貴族

ジャン・ド・リーニュ（1525年頃 - 1568年）は、スペイン領ネーデルラント（現在のベネルクス三国にあたる地域）で活躍した軍人、外交官、政治家です。バルバンソン男爵、アーレンベルク伯爵という称号を持ち、フリースラント州、フローニンゲン州、ドレンテ州、オーファーアイセル州の総督を1549年から亡くなる1568年まで務めました。

生い立ちとカール5世への仕官

リーニュ家の傍系、バルバンソン男爵ルイ・ド・リーニュと、ゼーフェンベルゲンの女領主マリー・ド・ベルジェの息子として生まれました。神聖ローマ皇帝でありスペイン王でもあったカール5世に仕え、その側近として活躍。1546年には、由緒ある金羊毛騎士団の騎士に叙任されるなど、早くからその才能を発揮しました。

アーレンベルク伯爵家の継承

1547年、ジャン・ド・リーニュはマルク＝アーレンベルク伯ロベール3世の妹で相続人であったマルグリットと結婚しました。この結婚により、彼はアーレンベルク伯爵位を受け継ぎ、アーレンベルク家の第3系統であるアーレンベルク＝リーニュ家を創始しました。これは、彼の家系にとって大きな転換点となりました。

北部4州の総督として

1549年、フリースラント州、フローニンゲン州、ドレンテ州、オーファーアイセル州の北部4州の総督に任命されました。総督として、彼はこれらの州の政治、軍事を統括する重要な役割を担いました。

サン・カンタンの戦いでの活躍

フランスと皇帝軍との戦いでは、1557年のサン・カンタンの戦いで皇帝軍の歩兵軍の左翼を指揮し、戦功を立てました。この戦いでの勝利は、彼の軍事的な才能を示すものでした。

プロテスタント反乱への対応

1566年、オラニエ公ウィレム1世やエフモント伯ラモラール、ホルン伯フィリップ・ド・モンモランシーといった有力貴族がプロテスタントを支持し反乱を起こすと、ジャン・ド・リーニュはスペイン王フェリペ2世への忠誠を固守し、彼らには与しませんでした。自らの統治する北部諸州でのプロテスタント支持の流れを完全に抑え込むことはできませんでしたが、1567年までは流血沙汰を起こすことなく平和的に任地を統治しました。しかし、その後はプロテスタント反乱軍に圧迫され、南部へ逃亡しアルバ公の軍隊に合流しました。

エフモント伯とホルン伯の処刑への反対と最期

アルバ公がエフモント伯とホルン伯を逮捕・処刑した際には、これに反対しました。しかし、1568年、アルバ公の命令により、オラニエ公の弟たちが占領したフローニンゲン奪回作戦の指揮を執ることになります。そして、5月23日のヘイリヘルレーの戦いで戦死しました。彼の遺骸はゼーフェンベルゲンの聖カタリナ教会に埋葬された後、1614年にアンギャンのアーレンベルク家の霊廟に改めて葬られました。アーレンベルク家の当主の座は、長男のシャルルが継承しました。

ジャン・ド・リーニュは、激動の時代を生きた貴族であり、その生涯は、政治的な忠誠、宗教的な対立、そして戦争といった要素が複雑に絡み合ったものでした。

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