リーニュ家

リーニュ家：ベルギー貴族の至宝

リーニュ家（Maison de Ligne）は、ベルギーの歴史を彩る名門貴族の一つです。その家名は、エノー州アト郊外に位置する小さな村、リーニュに由来します。11世紀にこの地の小領主として興って以来、リーニュ家はヨーロッパの歴史の舞台で重要な役割を果たしてきました。

起源と発展

リーニュ家の歴史は、エノー伯の廷臣として仕えた時代に遡ります。当主は主君に付き従い、十字軍遠征にも参加しました。1214年には、ゴーティエ・ド・リーニュとフラストル・ド・リーニュがブーヴィーヌの戦いでフランス王フィリップ2世の軍に捕らえられ、身代金を支払って解放されるという出来事もありました。12世紀には男爵位を獲得し、16世紀にはフォコンベルグ伯、17世紀にはエピネー公へと昇爵を重ね、名声を高めていきました。

1547年、マルク伯家の傍系であるアーレンベルク家の男系が途絶えると、リーニュ家の傍系であるバルバンソン男爵家のジャン・ド・リーニュが婚姻によってアーレンベルク家を継承しました。この結果、現在もベルギーの最高位貴族であるリーニュ公家とアーレンベルク公爵家は、男系を同じくする親族関係にあります。

ハプスブルク家との関係

1543年、当時の当主ジャック・ド・リーニュは、ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝カール5世に教皇使節として仕え、帝国伯の称号を授与されました。ジャックの妻、マリア・ファン・ヴァッセナールは、ライデン城伯家の女子相続人であり、ヴァッセナールやフォコンベルグ、フォールブルクなどの領地をリーニュ家にもたらしました。これらの領地は、リーニュ家の財産基盤を強化し、その勢力を拡大する上で重要な役割を果たしました。

ジャックの孫であるラモラル1世は、1601年に神聖ローマ帝国の帝国諸侯に陞爵しましたが、帝国諸侯としての実質的な権力はほとんどありませんでした。八十年戦争中、リーニュ家は他のワロン人貴族と同様にカトリック陣営に留まり、ハプスブルク家への忠誠を貫きました。ラモラル1世の孫、クロード＝ラモラル1世は、シチリア副王およびミラノ総督として活躍し、リーニュ家の名声をさらに高めました。第6代リーニュ公クロード＝ラモラル2世は、神聖ローマ皇帝軍の陸軍元帥を務めました。そして、その息子の第7代リーニュ公シャルル・ジョゼフは、軍人、外交官、文筆家として多才な才能を発揮し、リーニュ家が輩出した最も有名な人物の一人として知られています。

ベルギー独立とその後

1830年のベルギー独立革命の際、第8代リーニュ公ウジェーヌ1世は独立派からベルギー王位に就くよう打診されましたが、これを辞退しました。現在もリーニュ家はベルギーの最高位貴族の一つとして、ベルギー王室との親密な関係を維持しており、王室の人々と親称で呼び合うことを許されるという特別な特権を有しています。

リーニュ公爵家歴代当主

ラモラル1世（在位1601年 - 1624年）
アルベール・アンリ（在位1624年 - 1641年）
クロード＝ラモラル1世（在位1641年 - 1679年）
アンリ・ルイ・エルネスト（在位1679年 - 1702年）
アントワーヌ・ジョゼフ・ジスラン（在位1702年 - 1750年）
クロード＝ラモラル2世（在位1750年 - 1766年）
シャルル・ジョゼフ（在位1766年 - 1814年）
ウジェーヌ1世（在位1814年 - 1880年）
ルイ（在位1880年 - 1918年）
エルネスト（在位1918年 - 1937年）
ウジェーヌ2世（在位1937年 - 1960年）
ボードゥアン（在位1960年 - 1985年）
アントワーヌ（在位1985年 - 2005年）
ミシェル（在位2005年 - ）

参考文献

* Eduard Vehse: Geschichte der kleinen deutschen Höfe. Teil 6, Hamburg 1857, S. 273–290.

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